「相続」は、多くの方にとって、人生で何度も経験することではありません。
大切なご家族を亡くされた直後の深い悲しみの中で、慣れない法律用語や膨大な手続きの山に直面し、不安を抱えていらっしゃる方がほとんどです。
そんな時、頼りになるはずの法律の専門家である「士業」(司法書士、税理士、行政書士、弁護士など)に相談したものの、
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「説明が専門的すぎて、何を言っているのか理解できない」
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「依頼したはいいが、今どうなっているのか全く連絡がない」
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「どこか高圧的で、質問しづらい雰囲気がある」
と感じ、かえってストレスを抱えてしまった、というお話を耳にすることがあります。
私たち相続相談窓口mijika(ミジカ)は、日々多くの相談者様と士業の先生方との「代理人(相談員)」として活動する中で、この「コミュニケーションの溝」が深刻な課題であると痛感しています。
なぜ、相続という最も「心」が大切にされるべき分野で、士業と相談者様の間にこのようなすれ違いが起きてしまうのでしょうか。
その構造的な理由と、私たちが考える「あるべき姿」について考えてみたいと思います。
なぜ溝は生まれる? 士業の「常識」と相談者の「常識」のズレ
最大の理由は、士業が日常業務で培ってきた「常識」と、一般の相談者様の「常識」が、根本的に異なっていることにあります。
専門性の罠:「わかって当たり前」という無意識
士業は、法律や税務の「正確性」を追求するプロフェッショナルです。
彼らにとって戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)の取得や相続関係説明図の作成は「日常業務」であり、その中で使われる
「被相続人」
「代襲相続」
「遺産分割協議」といった言葉は、もはや「専門用語」という意識すらないほど当たり前のものです。
しかし、相談者様にとっては、その一つひとつが「初めて聞く言葉」です。
士業側は「説明しているつもり」でも、相談者様が「理解しているか」を確認するステップを省略しがちです。
その結果として、相談者様は「わからない」とは言えずに、ただ頷くしかなく、不安だけが募っていきます。
ゴールの違い:「手続きの完了」か「心の安心」か
多くの士業にとっての「仕事のゴール」は、「法的に間違いなく手続きを完了させ、登記や申告を終えること」です。
これはもちろん専門家として非常に重要な責務です。
一方、相談者様の「ゴール」は、手続きの完了だけではありません。
「無事に手続きを終えて、心から安心したい」
「故人の想いを汲み、家族間で揉めることなく円満に解決したい」 という精神的な「安心感」の獲得こそが、真のゴールであることが多いのです。
このゴールのズレが、「手続きは進んでいるようだが、こちらが不安なことを察してくれない」という不満につながります。
コミュニケーション相手の違い:対「役所」か、対「一般人」か
特に司法書士や行政書士の中には、日々の業務で関わる相手が法務局、市役所、税務署といった「行政機関」や、不動産会社、金融機関といった専門分野に長けた「法人」が中心であるケースが少なくありません。
これらの相手とのやり取りは、情緒的な配慮よりも「要件を満たした書類を、正確に、期日までに提出すること」が最優先されます。
このようなコミュニケーションが常態化すると、いざ一般の相談者様と向き合った時も、同じ「手続き本位」の人と人のコミュニケーションとは遠い、簡素で温かみのない対応になってしまいがちになります。
相談者が感じる「不親切」の具体的な中身
この「常識のズレ」は、具体的に以下のような行動として現れます。
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進捗報告の欠如
「書類一式を預けたきり、2ヶ月間何の連絡もない」というのは、よく聞く話です。
士業側は「役所の返答待ち」「次のステップの準備中」という「当たり前」の状態かもしれませんが、相談者様にとっては
「放置されているのでは」
「忘れられているのでは」という大きな不安の原因となります。
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説明下手と一方通行のコミュニケーション
相談者様の理解度を測らず、一方的に法律論や手続き論を並べ立ててしまう。
「なぜこの書類が必要なのか」という背景を説明せず、「これを取ってきてください」と指示だけをする。 -
これは「説明」ではなく「作業指示」に過ぎません。
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無意識の「上から目線」(先生稼業の弊害)
「先生」と呼ばれる職業柄、無意識のうちに「教えてあげる」「指導してあげる」というスタンスになってしまうことがあります。(実際に私もよくこのような士業を多く見てきました)
「そんなことも知らないのですか?」という態度は論外ですが、それに近い空気が、相談者様を萎縮させ、質問しにくい雰囲気を作り出してしまっています。
意外にも士業側はそう思われていることに「全く気がついてない人も多い」と感じます。
「サービス業」としての意識が士業の業績を分ける
一方で、すべての士業がそうではありません。
相続分野で活躍され、多くの依頼者から信頼を集めている士業の先生方は、例外なく「自分たちは法律サービス業である」という意識を強く持っています。
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専門用語を極力使わず、平易な言葉に置き換えて説明する。
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「今、どの段階で、次は何をすべきか」を定期的に報告(見える化)する。
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相談者様の言葉にまず共感し、不安を受け止めてから専門的な話に入る。
これらは、「特別なこと」ではなく、一般的なサービス業では「当たり前」のことです。
しかし、この「当たり前」を実践できる士業がまだ少ないからこそ、それが圧倒的な「強み」となり、依頼者や紹介者が集まり、結果として業績も良くなっているのです。
相続にこそ「心遣い」が必須である理由
私たちは、特に「相続」を扱う専門家であればこそ、この心遣い「顧客ファースト」と「安心感の提供」が必須であると強く考えます。
なぜなら、相続に関する相談者様は「直近で家族を亡くされている」という、非常にデリケートな精神状態にあることがとても多いです。
体調が悪い時に病院の医師から冷たい対応をされたら、どれほど傷つくでしょうか。
相続相談も同じです。
心が弱っている時に、専門家から高圧的な態度や無神経な対応をされれば、その傷は計り知れません。
そして、この視点はビジネス連携においても極めて重要です。
私たち(mijikaな相談窓口)が連携を行っている
「医療機関のソーシャルワーカー様」
「介護施設のケアマネージャー様」
「葬儀社のスタッフ様」
「寺院などの宗教者様」
は、日々、ご家族の深い悲しみや不安に最前線で寄り添っている方々です。
皆様が、大切な患者様や利用者様を「この人になら安心して任せられる」と思えなければ、これらの依頼ごとのご案内や連携など発生するはずがありません。
専門知識があるのは「大前提、当たり前」です。
その上で「この相談窓口・士業は、人を人として、温かく扱ってくれる」という信頼がなければ、大切な相談者様のご案内はできないのです。
mijika(ミジカ)が目指す「代理人」「ハブ」の役割
士業の先生方は、間違いなく高度な専門知識を持つプロフェッショナルです。
しかし、その「士業の常識」が、時に相談者様を遠ざけてしまう現実も、今まで10年近く相続相談に関わってきて私は見てきました。
私たち相続相談窓口mijikaの役割は、単に手続きを右から左へ流すことではありません。
当社は相談者と接する相談員を「mijika(ミジカ)な代理人」と呼んでおりますが、この役割は、
士業の先生方の「専門的な知見」と、相談者様の「不安な気持ち」の間に立ち、双方の言葉を「翻訳」し、手続きが完了するまでの道のりを「伴走」することが使命としています。
それこそが、私たちの存在価値です。
手続きの不安を「安心」に変え、ご家族が新しい一歩を踏み出すお手伝いをする。
そのために、私たちは士業の先生方とも粘り強く対話を続け、相談者様にとって最も「寄り添える相続相談窓口」であり続けたいと思います。
