他人にモノを教えること | オンライン証券社長のblog

他人にモノを教えること

以前、懇意にしていただいている社長から

社員教育に関する興味深い話を聞いた。


ある会社から吸収合併の話を持ちかけられ

そこの会社を社員ごと買い取った。

買い取る際に、出来の悪い社員が居て

経営者から「○○さんを引き取って

雇うのは止めた方が良い。札付きの

ダメ社員だから」と言われたが

彼は社員一人残らず雇い入れた。

入社したての○○さんの勤務態度は

噂どおり酷かった。

彼は忍耐強く○○さんを指導し続けた。

3年後・・・○○さんは、その社長を

支える立派な中間管理職に育った、という。


「会社や取引先のみんなは○○さんが変わった事を

『○○さんが変わったのは社長の努力のお陰ですね』

といってくれるんだけど、そうじゃないんだよ。

努力して変わった彼が偉いんだ。

俺は単に手助けをしただけだよ。

俺がどんなに良い言葉をいったって、

その人がそれを理解し実践しなければ

何も変わらないだろう。

結局、俺が偉いんじゃない。」


この話を聞いた時、

この社長は何て謙虚な人なんだろう、と

想ったのだが、今は少し違う感想を持っている。


無論、この社長の謙虚さは以前尊敬しているが、

それ以上に、助言したからといって、

その相手が必ずしも変わるとは変わらないし、

変わったからといって、本人の努力に因るところが

大きいと思う。


義弟が、以前、私の下で修行していた時代がある。

激しかった若かりし頃の自分に耐え切れず、

義弟は私の元を去って行った。

その後、彼は営業マンになり、トップセールスとして

頭角を現し、みるみるうちに出世していった。

後日、義弟から、聞いた話だが、

熱心に私の語り掛ける言葉をメモに取り、

普段いつも持って歩き読み返していたそうだ。

「義兄さんのお陰だ」

という義弟の言葉に対して、

一言、先の社長の言葉が自分の言葉として

口から出た。


「私が偉いんじゃない。

努力して変わった貴方が偉いんだよ。

私は単に手助けをしただけで、

貴方が理解し実践しなければ

何も変わっていなかっただろう。」


他人にモノを教えることは難しい。

弛まぬ努力を根気よく続ける他方法がない。

しかし、教える方も大変だが、

学ぶ方はもっと大変だろう


知っている事を分かりやすく何度も教えたつもりでも

なかなか覚え習得してくれない生徒。

知らない事を湯水のように浴びせかけられながら

なかなか理解できない自分に苛立つ先生。


教える方、教わる方、双方が

お互いを尊重し合うことが大切だと想う。