映画 「ブルーベルベット」の耳プロップ☆驚きの事実 | STUDIO-FUNDESIGN(スタジオ ファンデザイン)のブログ

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 本日は 、映画 「ブルーベルベット」の4 Kリマスター Blu-rayが発売されたということで鑑賞したおり、 個人的に驚きの事実があったので載せたいと思います☆


「ブルーベルベット」はデビッド ・リンチの 傑作映画です。
 のどかで平和な町を舞台に、主人公が唐突に切られた 耳を草むら発見し、そこから町の暗部に触れていく迷宮のような物語です。
 この主人公が発見する 耳 はこの映画のシンボルとなりいろんなポスター 等でも大事なモチーフとして使われていました。



今回新たに収録されたメイキングでは、この映画を担当した特殊メイクアーティストのインタビューが豊富に入っています。
 その中で最初にさらっと言われて気になったのはこの耳は シリコンで作られたと言っていたことです。
 これは本当なら かなり驚きで正直誤訳を疑いました…。

 というのも この80年代 当時はまだシリコンによる特殊メイクは全く一般的ではなく、シリコンという素材はあくまで 硬い鎧 なんかを作る時の型取り素材として使われるものでした。
 シリコンそのものが特殊メイクの人口皮膚の素材になったり 、何かモンスターのマスクになるということは全く技術としてなかったからです。
その後 、90年代 いろんな実験を ハリウッドでされたのですがちゃんと一般化して使われるようになったのは 90年代後半 、いろんな実験を重ねてからでした。
 厳しいタイトなスケジュールの中でも シリコンの特殊メイクは問題ないという風に技術革新がされたのは2000年代に入ってからになります。
 日本でも僕がシリコンのマスクを作りたい、シリコンの特殊メイクを習いたいといろんな特殊メイクの工房で働いていた時は、まだ不安定な素材だから 既存のフォームラバー や ラテックスで十分という先輩たちもかなりいた時代です。
 型取り用のシリコンと、透明度の高い人口皮膚に使えるシリコンは実は全く違う素材です。
人工皮膚に使えるシリコンはフォームラバー やらテックスに使われている 硫黄成分に反応して簡単に効果不良を起こしてしまうのです。
 それがゴムを触った器具や 手で触れて 効果不良になるならまだしも、大気中に硫黄成分が散らばっているだけでも効果不良を起こしたりしていたので、とても使える代物ではありませんでした 。

それがだんだんと改良がなされ、 使える素材になっていきました 。(弊社使用のシリコンも効果不良の心配が全くないシリコン素材で製造出来ています)
長い長い 20年ぐらいの歳月が必要だったのです。
今では逆に簡単に効果不良を起こしてしまうシリコン剤を手に入れる方が大変かもしれません 。もうそういったものは 特殊メイクの材料流通ルートからは、ほぼなくなったかと思います。

 その渦中になんとなく 自分も端っこで右往左往していたので、このインタビューで 最初、耳はシリコン製だよと言われた時は そんなはずはないと耳を疑いました。耳だけに(笑)

 しかしその後このメイキングではいろんな調査の結果、 この映画の耳が実は映画のプロップとして初めて シリコンが使われた歴史的な映画だと判明したということが述べられるのです。

今や モンスターや 老人・内臓のダミーなど 幅広く シリコンが使われるようになりました 。
しかし 歴史をさかのぼっていく大事さはあると思います 。
映画 「ブルーベルベット」は傑作映画であるだけでなく、特殊メイクの歴史においてもシリコンが初めて実際のプロップとして使われた歴史的な1本だということが分かりました。
 今後は是非その点も注目して見ていきたいと思います

こちらが 昨年新たに発売された4 K リマスター・Blu-rayです 。
是非そんな特殊メイクの世界にも注目してみていただけたらと思います!☆

それではまた♫