きっかけがあって、
永井荷風『墨東奇譚』を読んでいると、
次のようなことが
書いてありました。
話し相手のことばが
ぞんざいになってくると、
自分もそれに合わせて
ぞんざいなことば遣いになる。
その理由について
永井が説明する箇所です。
「処と人とを問わず、わたくしは
現代の人と応接する時には、
あたかも外国に行って外国語を操るように、
相手と同じ言葉を遣う事にしている」
と。
なるほど。
私が「現代の人」とうまく付き合えないのは、
「相手と同じ言葉を遣う事にして」いない、
そういうところにもあったのだな、
と気づかされました。
絶対に遣わないことにしていることばの1つが
「マジ」です。
私「ほんまに?」
相手「マジ」
私「ほんまかなぁ……」
相手「マジですって」
こんな感じです。
「ガチ」も遣いません。
私「ほんまに?」
相手「ガチ」
私「ほんまかなぁ……」
相手「ガチですって!」
「マジ」と「ガチ」は
多くの文脈で
どちらを遣ってもいいことに
今気づきました。
違うのは
「ガチ」を遣う場合の方が
相手の語気がやや強いこと
ぐらいでしょうか
(その点を「!」で表しました)。
私は全部「ほんまに」だけ。
自分の語彙の少なさにも
今気づきました。
あと「ウマ」。
隣で食事しているグループのメンバーが
やたらと「ウマ」「ウマ」と言っているのを聞くと、
わびしくなります。
いかにも「自分たちは今、
感動的においしいものを食べている!」
という感じで、
場をみんなで一生懸命盛り上げようとしている。
そう感じるからです。
テレビでよく見かける
「食レポ」を真似ているのでしょう。
私なら、すぐに
うつ状態になりそうです。
ちなみに
「ウマ」は「ウンマ」の場合も
あります。
今思い出したのですが、
「ヤバい」も
遣わないことにしていました。
私がこれらのことばを遣わないのは
ただ自分の感覚に合わないから
という理由に過ぎません。
その感覚も
習慣によってつくられただけ
ですが。
「現代の人」とうまく「応接」できなくても、
「マジ」と「ガチ」と「ウマ」と「ヤバい」は
やはり遣わないことにしようと
あらためて決めました。
年譜によると
荷風が『墨東奇譚』を執筆し始めたのは、
昭和12(1937)年、
荷風58歳のころ。
老いても精神はしなやかな人
だったのでしょうね。
でも
「ヤバッ! マジでガチにウマッ!」
とか口にする高齢者には
近寄りたくないです。