歯医者さんで根っこの治療(根管治療)になると

どんなに大変か?ってことを

今回はお伝えしたいと思います。

上の図は根っこの中の根管がどんな風に複雑な構造をしているのか?ってことが

よくわかる写真です。

模型にすると複雑さは割愛され単純になりま~す。

歯はお口の中に歯冠が生えてきて

数年かかって

根っこの先までしっかり形が作られます。

 

皆さんがいつもお口の中で見ているのは

歯の頭の部分(歯冠部)だけですが、

歯は歯茎の内部の骨の中にその長い根っこがあるから

抜けずに存在してくれているのです。

おおよそ歯冠長1に対して根の長さは2って感じでしょうかね・・・

根っこの中には歯の象牙質に栄養を与えたり

知覚をつかさどる歯髄があります。

歯に加わる外部からの色々な刺激を感知したり

細菌や細菌性毒素を感知して

それらが身体内部への侵入することを防ぐように、

むし歯などの疾患をあなたに気付かせてくれたり、

歯髄内に存在する免疫細胞が体の内部に侵入しようとする細菌に抵抗してくれたり、

侵襲に対して第二象牙質を形成するなど、

歯髄組織は防御機能の役割も担っています。

 

歯の防衛扉第一層である知覚もなければ自己修復能もない頑強なエナメル質が破壊されたり溶けた後、

かなり厚みのある第二防衛層である象牙質で更に守り、

やっと歯髄に到達します。

歯髄そこはもう身体の内部組織ということになります。

 

 

ここがやられると本来ならばもうそ歯は感染源でしかないので抜歯して対応するしかないんですけど

歯学や歯医者の技術の発達により

大変有難いことに

歯医者に行って

根管治療を行ってもらえば

何とか抜歯を免れることができます

これこそが歯を守る優秀な歯医者の仕事って感じです!!

 

根管治療は偉大な学問分野で

歯科ではとても凄い分野という認識が歯医者には共通認識としてあります。

しか~~し、

残念なことに日本の医療制度の中では

根管治療の保険点数は悲惨な点数配分しかされていませんから

これが歯科ではとても大きな問題になっています。

 

ひと昔前は、歯髄を抜いた後にできる

空洞(「歯髄腔」)にホルマリンクレゾールやヒ素やペリオドンなどの劇薬を入れて
残った歯髄や細菌をミイラ化したりして歯を保存するということがよくされていましたが、

今はそういう劇薬を一時とはいえ身体の一部に入れておくという治療は

あまりされなくなってきています。

発癌性があるとかいろいろ言われましたし

アレルギーも最近の人については怖いですからね。。
アレルギー体質の人って増えてきていませんかね?
一応、参考に貼っておきます。

https://www.kenei-pharm.com/medical/countermeasure/toxicity/04.php
もちろんですが、どういう薬剤でも医師・歯科医には裁量権がありますし、

劇薬はその他でもいろいろ必要であれば治療に使いますから

こういう難しい根管を治療するんだから使用したほうがいいという歯科医も多くおられますし

治療成績がこっちのほうが自分が行ったらいいから使ってるんだという歯科医も多くおられて当然です。

https://www.dentwave.com/article/imai37/
こんな感じでFC使ってるのは当たり前ですよという考えがあるのもわかります。

が、うちの医院はずっと以前からFCなどの薬は使用しなくなりました。

歯医者さん特有の臭いの元、これ、ほとんどこのホルマリンの臭気だと思います。

医療スタッフにとってもこの臭気がある職場に人生の大半いなくちゃいけないんですから

よい職場環境とは言えないですしね。。。。
平成18年のもののようですが

以前は結構FCもペリオドンも使っていたみたいです。

亜ヒ酸というのは現在は日本で販売が中止されているようです。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjoms/63/1/63_15/_pdf/-char/ja

こういう情報を見られると

根管治療を受けたくないと強く思われる方は多いと思いますが、

歯科医も好き好んでこういう劇薬を使っていたわけではなく

虫歯を作ってくる人がまだいて

根管は非常に複雑で

これを綺麗に機械的拡大をして

薬液で洗浄等を行っても

まだ症状に苦しむ方がおられるので

致し方なく保険適用薬なので使用していたわけですから

また~~~歯医者が~~~~~~

まるで安倍が~~~~~のように

条件反射的に過剰に反応するのだけはやめておいてくださいね~

 

最近の歯科の根管治療時には多くの自費専門医ほど

ほとんど劇薬は留置しなくなってきています

ただ、機械的洗浄だけでは複雑な根管内の細菌感染制御できませんから

化学的洗浄剤には劇薬を使用している歯科医のほうが多いと思います。

まあ、こちらも使用しない方法もあるので

もしもどうしても薬は一切使用しないでほしいという特殊なこだわりというか

ほぼ宗教みたいな強いお願いがある方の場合は

そういう特殊な歯科医院を探されるかまたは抜歯になるのではないかと思います。

奇妙な患者さん側のこだわりで歯を失うことがないようにということは念のために追加しておきます。

 

 

根管って歯冠の溝と同じように

とんでもなく複雑な形態をしていますから

人間が治療の対象にするには

本当に大変なところということになります。

 

最近はマイクロエンドというのが流行っています。

マイクロを使うと歯の結構奥のほうまで光が届いて

さらに倍率が20倍くらいまでは拡大できるので

視認できることが多くなるというのは

とても良いことだと思います。

が、基本的には視認できる範囲というのは実際には限られごく上の方に限定されますから

ここにどれだけこだわる必要があるのか?とは皆歯科医は疑問を持ちつつ

でも、ないよりは患者さんとも情報の共有ができますし

アピールにもなりますから

ここに拘って自費で根管治療を1本10万円程度の治療費で

開業している歯科医も徐々に多くなってきています。

マイクロスコープとラバーダム防湿をしっかり行うことで

患者さんも術者も安全を確保しておいて

治療を進行していく治療は

安価な保険の根管治療費でいい加減な治療しか受けられなかった運の悪い方にとってはとても福音のようです。

 

当院にもマイクロスコープはありますから

ここぞというときに使用することはありますが

視認できる根管治療って実は後に大きな問題を抱える可能性もあるので

すべての治療時にマイクロスコープを使用することは行っていません。

見たいと思えば歯質をどんどん削らずには無理ですから

著名なマイクロエンドのセミナー講師の根管治療後は歯根破折が生じているという笑うに笑えないような話もあったりします。

根管はマイクロで先まで見ようとしないほうが良い治療になります。

もともと

根管は複雑で先っぽが曲がっていたり

途中がクネクネ交雑しているケースも多く

できるだけ視認しつつ根管治療を行いたいとすると

かなり大きめに歯質を失うことにつながる場合があるんですよね。。

歯根の歯質の厚みを根管治療の視認性をよくするために失うっていうのは本末転倒ですから

できるだけ見えなくても上手い治療を行ってもらえたならばそれが一番良い結果につながりますね。

とにかく歯髄腔内を感染させない、

細菌を入れないことが大切です。

 

ここで一般的な単純な根管治療について画像をいくつか貼っておきます。

虫歯になって歯が痛むときには

一般の方がお口の中をのぞいて

気が付く歯の穴は極々小さいということがしばしばあります。

歯の溝が黒くなって少し穴や引っ掛かりが生じて

歯が時々しみるからといって

歯科医院を受診されると思いますが、

小さな虫歯の穴の下は実はとても大きな穴になっていて

内部の象牙質はすでにグニャグニャと軟化してしまっているということが

よくあります。

これはエナメル質と象牙質の構造の違いにより起こります。

痛みが生じてから歯科医院に来院されると

治療に着手すると

内部が軟化していて

簡単に抜髄に至ることはしばしばあります。

当院ではできるだけ抜髄に至らないように

歯髄を温存するための様々な道具や治療薬を用意しています

(ほとんど自費治療になります)が、

そういうものがない保険治療主体の歯科医院で

患者数が多くて一人当たりの診療時間が十分とれないような歯科医院の場合(それに限定はできませんが)

虫歯を取り除くと歯髄が露出して

感染していると抜髄にそのまま移行することになります。

そうなると根管治療を成功させるための器具は

歯冠の真上から入れなければ根尖に行きつかないため

いきなりタービンでドガ~ンと歯に大きな穴を開けることになります

この作業が根管治療を成功させるためには必要なのです。

この図はずっと以前に世界と日本の歯科治療費の比較をするときに使った図です。

日本の保険治療の場合、

根管治療費はアメリカの治療費の100分の1程度なんじゃない?

ってことは今回は突っ込まず置いておくとして、

歯に空いた小さな虫歯だからすぐに直してもらえるだろうと期待して

来院されたとしても

虫歯の部位が悪かったら(特に隣接面虫歯これは大きく治療により歯質を失います)

根管治療の最後にはこれ以上に歯質をなくしてしまうことになるんですよね。

難しい根管治療を成功させるためには根の歯質も

歯冠の内部の歯質も必要ならば削ってしまわなければ難しい根管治療を成功させられないのです。

根っこの治療を行うための器具とお薬をできるだけすんなりと

最も重要な根管の先っぽにできるだけ到達させることが必要なんですよね。

もしも歯冠部の拡大が不十分で更に曲がりがよくない器具で

歯根内の根管壁をスムーズにしようとすると

途中でステップを人為的に作ってしまうことにつながり

治療の難易度を上げてしまうので

そうならないようにいろいろと苦労をしつつ

根っこの先っぽを目指して

根管の壁をできるだけスムーズにしていく地道な治療を進めることが必要なのです。

メインポイントがしっかり術者が意図して拡大した根管にすっと入って先っぽが完全にシーリングできるように

地道な機械的拡大と化学的洗浄を繰り返す作業が行われます。

そして最後はポイントにシーラーを塗って

再度細菌感染が生じないように

身体の感染源にならないように
お薬でシーリングします。

これを根管充填といい

加圧も必要なので

歯の頭側の歯冠部の内部歯質は意図的に削り取られてしまうのです。

 

こうやって大きな穴がぽっかり空いた歯は弱くなっていますから

再びガンガン咬んでもパッカリ割れないように

充填剤で充填したり

必要があればファイバーポストで加強したり

また虫歯を取り除いた後と根管治療を成功するために必要に応じて削り取った歯の穴の状態に応じて

修復材料で修復して最適な歯冠の形態を取り戻しておくことになります。

虫歯がもともと溝の中心に出来ていて根管治療時に必要な歯質の除去部位と合致していれば

インレーや充填物で修復して終えることができますが、

痛みが酷くて炎症もなかなか収まらなくて噛み合わせをいったん低く落としておかなければ治らなかったケースの場合は

オンレーの選択になるでしょうし、

そもそもよっぽど放置していた虫歯だったり隣接面からの虫歯だったら

ドドドドドド~~~~ンと歯質を失いますから

根っこに土台を立ててそこにすっぽりかぶせるクラウンという選択肢しかなくなります

土台の材料やクラウンの材料やどこの技工士にどの程度のレベルで作ってもらうように治療を進めるのか?で

クラウンの治療費は天から地くらいの開きがある治療費幅の中から

歯科医と相談して選択されることが必要になります。

それで、

4500ドル!!!45万円!!

ってのがアメリカの治療費ということになります。

ゲッソリ滝汗ゲッソリ滝汗ゲッソリ滝汗

 

そう。

ここまで読まれたあなたがとるべき賢い選択といえば・・・・・・

↓↓↓

 

こういうことを知ったからには、

虫歯を作らないように食生活と歯磨きに気を付ける!!!

 

まず、ここがとても大切になりますね。

 

そして、できれば食生活にも歯磨きにも自信がもてないならば

歯科医院に定期的に通院して

虫歯になるような歯の状態になっていないか?

できるだけ早く発見してもらってさっさと小さな虫歯のうちに充填治療ができるうちに直してもらっておく。

 

これで、歯医者もあなたも両方がHAPPY~~になれますね。

 

歯科医もこんなに大変な根管治療はできれば皆したくないんです。

その証拠にアメリカでは、根管治療をインプラント治療以上の治療費に設定しておいて

難易度の高い再根管治療はできるだけ行わず

即抜歯してインプラント治療を行うことがルーティーンワークになっています。

難治化した根管治療に数十万円支払ってくれる保険会社がないんじゃないかな?と思います。

根管治療は訴訟も多いし、訴訟で負けることもしばしばあるようですから

そういうリスクを冒してまで大変な根管治療を引き受けてくれるのは

歯内療法専門医だけになります。

 

私の知人でアメリカで開業している歯科医も

根管治療は専門医に即出していましたね。

下手に手を付けると面倒だからでしょうね。

 

日本の場合、幸いにも保険の安価な治療費でも

割と熱心に保険医である私たちが根管治療を行っています。

そりゃ~~~数十万円の治療費を請求しなくちゃやってらんね~~~という気になることはしばしばありますが、

田舎の保険医であれば根管治療は避けて通れませんから

歯科医が何時間かかけてあるいは何回も何回も通院してもらって

難しくなっている再根管治療も行っています。

 

どうしても無理というケースはありますから

その場合は患者さんの希望があれば歯内療法の専門医にご紹介することになるのですが

あいにく地方では歯内療法に数十万円の価値を見出す人自体が少ないため

専門医で開業している歯科医はほぼいませんから

かかりつけ歯科医で保険の範囲内で難易度が高くても

その歯科医の技量の範囲内で根管治療を行うことになっています。

 

歯科医から期待したいことは、

国に対してはマイクロの使用加算を一部つけてくれたのはわかりますが

もうちょっとというかもっともっと高額な治療費をつけてほしいと思います。

そして患者さんには時間がかかる治療になっている場合、

歯科医も安価な保険点数に関わらず時間を厭わずあなたの歯をできるだけ保存して使わせてあげようと

その誠意と熱意だけで赤字になっていながら頑張って治療しているわけですから

クソッタレの下手糞とか思わないで

あ~~自分の歯のためにこんなに頑張ってくれているんだなということくらいは

理解してもらいたいな~~~と思っています。

 

そして歯科医も患者さんも双方にとって良いのは

あなたが虫歯を作らないということと、

定期的に歯科医院に通院され早期のうちに虫歯の治療をしてもらっておく

特に充填治療で終えられる程度のうちに治療してもらっておく

ということを習慣にしてもらいたいなと思います。

 

難治化した根管治療を成功させるのは本当に難しいので、

できるだけ歯は削らない治療を選択しておいてくださいね。