猫の腎不全・慢性腎臓病 血圧とカルシウム拮抗薬 | ふぁんふぁんのしっぽ ~猫の腎臓病・糖尿病 ブログ~

猫の腎不全・慢性腎臓病 血圧とカルシウム拮抗薬

なかなか手強いふくちゃんの慢性腎臓病。
けっこう進行が早くて悪戦苦闘しています。

実は先日、ふらつきが出た“ガバペン”について調べていたところ、
あるサイトで降圧薬についてアドバイスを頂きました。

そのアドバイスをもとに色々調べると、
今まで抱いていた疑問にも繋がる事がありました。



今日の記事はかなり小難しい内容ですけど腎臓病や高血圧に関することなので、
少しでも関係ある猫さんの世話人さんは是非お読みください。

獣医療が進歩した時に初めて答えが出る内容ですが、
今現在もお役に立てる状況があるかもしれません。

まず・・・
腎臓病になると血圧が高くなる子と、それほど高くならない子がいます。

イギリス王立獣医大学が780頭の猫を対象に行った調査では、
1頭あたり5回の計測で得た収縮期血圧(最高血圧)の
中央値が120.6でした。
(中央値は平均値ではなく、いくつかの数字を順番に並べた時の真ん中の数字です)

ふくちゃんは結構高く、お薬飲まなければ最高血圧が180~200くらいです。
だいたい150以上が治療対象となっている上限数値です。



まずは高血圧を下げないと腎臓がダメージを受けます。
猫の慢性腎臓病で血圧に関係する一般的なお薬は・・・

・フォルテコール (ACE阻害薬)
・セミントラ (ARB)

それぞれ作用の仕方が違いますが、このどちらかが基本です。
その他、今では下記のお薬を第一選択にされている獣医さんが多いと思います。

・ラプロス (ベラプロストナトリウム)

このお薬はフォルテコールやセミントラとは根本的に違うお薬で、
やや気になる事が多々あるお薬なので選択肢に入れてません。
上記のお薬で不十分な場合、降圧作用のあるお薬として、
 

・アムロジン(カルシウム拮抗薬)
 

を服用するのが一般的かと思います。
多くの獣医師が心臓病や腎臓病の治療で使っているお薬です。

ふくちゃんは最近、ラプロスを止めたので・・・

・ベナゼハート(フォルテコールのジェネリック)
・アムロジン(アムロジピン)

昨日まではサプリ以外に上記の2種類を服用させていました。
(ラプロスを止めた理由は後述します。)



最近購入したペット用血圧計を使ったところ、まだ高めの数値が計測されました。
でも、下がりすぎるのも問題なので、安易に増やせません。
 

ここからが本題です。

アムロジンなどのカルシウム拮抗薬にはいくつかの“型”があります。
“L型”“T型”“N型”の3種類あり、アムロジンは“L型”です。

カルシウム拮抗薬の作用を簡単に言うと・・・

血管を広げる(拡張する)事で血圧を下げる効果があります。
 

どうやって広げるのか?というと・・・
 

細胞内(血管の筋肉)にカルシウムイオンが入ると血管が収縮してしまうので、

カルシウムイオンが入らないように遮断する事で血管を拡張させます。
“L型”“T型”“N型”の3種類の違いは、どこを遮断して広げるか?です。

ここからさらに難しくなります!

尿が出来るまでの血液の流れを簡単にいうと・・・

腎臓に入った血管(腎動脈)から枝分かれした血管(輸入細動脈)が糸球体に入ってろ過され、
糸球体から出た血管(輸出細動脈)を通って水分など再吸収されながら腎静脈に入ります。



例えると・・・
風船に入るホース(輸入細動脈)と、風船から出るホース(輸出細動脈)って感じです。

“L型”は輸入細動脈のみに作用(遮断)して拡張させますが、輸出細動脈には作用しません。
入るホースは広がるが、出るホースは広がらないので、風船自体の圧力が上昇する。

“T型”“N型”は輸入細動脈だけでなく、輸出細動脈にも作用(遮断)して拡張させます。
入るホースも出るホースも広がるので風船の圧力は一定。

ということは・・・
“L型”は輸入細動脈からの血流は増えますが、輸出細動脈は拡張していませんので、
糸球体に入る血液量だけが増えて出る量は増えず、糸球体内圧が高くなってしまいます。

元々の血圧にもよるので一概には言えないと思いますが、
糸球体内圧が高くなるという事は、結果的に腎臓に負担がかかるという事かと。

それなら、輸入細動脈だけでなく輸出細動脈にも作用する“T型”“N型”の方がいいかも?
“T型”“N型”に作用する“ベニジピン”“シルニジピン”というお薬への変更はどうか?

『参考資料:カルシウム拮抗薬の違いと使い分け』

 

 

ということで、主治医の先生に血圧測定値とこの疑問を資料にして相談してきました。
主治医先生の回答は・・・予想通りでした。

・獣医療ではここまで考えられておらずエビデンスがない。
・理論上は正しいが、副作用も含めて猫でどう作用するか分からない。
・基本的に獣医療では“アムロジン”一択。


なるほど。

ここまで考えなくても良い。という訳ではなく、
この理論を猫に当てはめて治療した時の責任が持てないという感じでした。

そりゃそうやね。

ヒト医療では当たり前のことで、この理屈をもとに処方されています。
むしろ、今では腎臓病の患者ではこの考え方が取り入れられてきているとの事。

実はこの疑問、犬の腎臓病でこのお薬チョイスをされている方からのアドバイスでした。
なので、この治療が全く行われていないという事ではないです。

ただし、猫ではどういう結果が出るか分かりません。
主治医先生も知りませんでしたし、知ってる獣医さんはほとんどいないでしょう。

しかし悩みどころやね。。。

とりあえず、もう少しUP/Cの推移を観察してから考えるという事で落ち着きましたが、
ベナゼハート(フォルテコール)テルミサルタンに変更する事になりました。

これでも進行が止まらなければ自己責任で“アムロジン”“ベニジピン”に変更します。



あと、ラプロスは中止するように言われました。
既に一週間前には自己判断で止めてましたので、これはこれで問題なしです。

本来のステージ2~3を対象にしたお薬である事は中止した理由ではありません。

実は、今回聞いた糸球体内圧の疑問が“ラプロス”を中止する理由の1つになってます。

質問内容のように糸球体内圧が高くなっている状態で“ラプロス”を服用させた場合、
血流を良くする作用が逆に負担になってしまわないか?という単純な疑問がありました。

どう考えても、高血圧状態で無理に血流をアップさせると血管に負荷がかかります。
 

なので自己判断で止めましたが、今日の主治医が中止を即した理由も同じ理由。
前回、前々回の尿検査で気になっていた潜血+1と+2が、もしかすると・・・です。

基本的に“ラプロス”は血流を上げる作用を目的にしているので、

糸球体内圧が高い状態で服用するとさらに血圧が高い状態になります。
 

しかし、“アムロジン”により全身性高血圧は抑え込まれているので数値では分かりません。
ハッキリとは言いませんでしたが、腎出血の可能性が高いとの事。

やっぱり!

実は今日の相談に備えて“ラプロス”ではなく“ベラプロストナトリウム”について調べてました。
“ベラプロストナトリウム”“ラプロス”の有効成分で、以前から使われていたお薬です。

その“ベラプロストナトリウム”の作用・副作用について調べたところ・・・
なんと、BUN上昇、血尿、頻尿の副作用があり、複数の器官で出血傾向が表れることが・・・

アカンやん。

同じ成分の“ラプロス”では血尿とか出血傾向とか書かれてないのに・・・なんで?
さらに、“ラプロス”のエビデンスについて主治医先生に聞いてみた。

・実は、騒がれているのは現時点では日本国内のみで、海外ではほとんど・・・
・サプリや食事療法で改善、維持できる程度の初期腎臓病猫で臨床試験が行われた。
・高血圧での臨床データは全く無い。


なるほど。

決して悪いお薬ではなく、ステージや状態に合わせて服用すれば効果が出るのでしょう。
しかし、進行した状態で高血圧も併発しているなら危険度がイッキに上がる可能性があります。

なので、“ラプロス”を服用しても変化がなかったり悪化したりした場合は注意して下さい。
特に高血圧もしくは高血圧の疑いがあったり、他に大きな疾患がある場合は慎重にです。


 

恐らく、獣医師によって考え方が分かれるところだと思いますし、
病気って様々な要素が複雑に絡み合って病状が現れるので判断が難しいのは分かります。

でも、世話人ならではの単純な疑問からくる探究心が良い結果に繋がる事もありますよね。
発覚当初、一般論を鵜呑みにして疑問を持たなかったことに反省です。

けっこう長い間、“ラプロス”を服用させたので手遅れで改善は無理かもですが、
とりあえず、今日からお薬変えて10日間ほど様子みて再診です。


脚も良くならず仕方なくお薬もらってきましたので、また経過を記事にしますね。
(オンシオール錠 猫用を1日1回、1/2スタートで短期間少量服用)

でわでわ!