「人のテストを勝手に見るな!先生、注意して!」テストを勝手に見られてバラされた? | 元中学校教師が教える学校のウラ話

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公立の中学校で25年間、勤務していた私が「クラス替えの仕方」「修学旅行」「部活」「未納」「モンスターペアレント」「学級崩壊」「いじめ」「不登校」「人事異動」など、今まで話すことができなかった、学校のウラ話をお伝えしていきます。

テスト問題のヒントをあげたのに・・・・。



1.5教科の点数は全て一桁・・・。
2.二桁を取るための放課後学習会を開催!
3.1教科だけ平均点(70点)を取ったらどうしよう?
4.くそ~10点は取れると思ったのに!
5.「次もがんばるぞ!」と思えるように
6.目標の二桁(10点)達成!
7.勉強の仕方が分かりやる気になってきたヤマシン!
8.テスト返し!正解に×がついている子は持ってきて!
9.やったーー!これで二桁!目標達成!
10.勝手に人のテストを見るなんてひどい!
11.信二くんは見てないよ!自分で発表したんだよ!
12.はぁ?先生、何を言ってる?意味が分からないんだけど?
13.こらっ!友達のテストを見ちゃダメだぞ!

 

※この記事は境界知能の子をバカにする記事ではありません。
※彼は中学の3年間で着実に成長していきます。そして、希望した高校に合格。
※特別支援学校の教員を目指すようになります。


1.5教科の点数は全て一桁・・・。

中間テストや期末テストでのヤマシンの目標は二桁をとることです。

しかし、最初のテストでは全てのテストで一桁をとってしまいました。

当然、順位は264人中264位です。

「1つでも好きと思える教科をつくりたい。」
「周りと比べれば低い点数でも、ヤマシンが『やった!』と思える点を取らせてあげたい。」
「次のテストでは私の教科を重点的にやらせよう!」

このように考えた私は、テストの1週間前からヤマシンと放課後学習会をすることにしました。

イヤといっても半強制で参加させます。

※    実際、ヤマシンは「イヤ」と言うどころか「ありがとう」と言ってくれました。


2.二桁を取るための放課後学習会を開催!

1学期の期末テストの1週間前。

私はヤマシンを放課後学習会に誘います。

そこでは、問題集のやり方を教えるとともに、私の教科の基本問題を教えます。

当然ですが1学期の期末テストをつくるのは私です。

ということは、どのような問題がでるのか(出すのか)も、当然、分かっています。

私はヤマシンにテストにでる問題と同じような問題を解かせます。

もちろん、テスト制作者の丁寧な説明つきです。


3.1教科だけ平均点(70点)を取ったらどうしよう?

毎日、放課後学習会を1時間おこなったヤマシンと私は同じ事を思っていました。

「コレならテストで二桁とれる!」

逆に、私はこのような心配をしていました。

「私の教科だけ平均点とかとれちゃったらどうしよう?」
「他が一桁なのに、1つだけ70点とか取っちゃったら不自然だよね?」

『先生がヤマシンをひいきしてる!』

「こう思われたらどうしよう・・・・。」
「ちょっと、やり過ぎだったかな?」

しかし、私の考えは杞憂に終わりました。

なぜなら、ヤマシンは私の教科で8点しか取れなかったからです。


4.くそ~10点は取れると思ったのに!

他の教科が0点~3点であることを考えれば8点は良い点です。

ヤマシン自身も8点を喜びつつも悔しがっていました。

「くそ~!10点は取れると思ったのに!」

私の予想以上にヤマシンは記憶が苦手なようです。

そこで、私は次のテストのときに、もう少し具体的な支援を試すことにしました。

本来であれば「ひいき」と言われてしまいかねませんので、ココだけの内緒にして下さい。


5.「次もがんばるぞ!」と思えるように

2学期の中間テスト1週間前。

恒例の放課後学習会が行われました。

私はヤマシンにこのような気持ちを持って欲しいと思っていました。

「ガンバった!」→「点数が上がった!」→「次もがんばるぞ!」

そして、ココだけの話ですが、テストに出る問題をさりげなく何問か教えました。

「ヤマシン!」
「今日はこの3問を完全に出来るようになろうな!」

この3問の中の1問はテストに出る問題とほとんど同じ問題にしました。

もし、ヤマシンが1週間の放課後学習会の問題を全て完璧にすれば30点は取れるでしょう。

ただ、前回の様子を見ると良くて20点と言うところでしょうか?

※    平均点が70点程度のテストですのでヤマシンが20点をとっても、それほど平均は変わらないということにして下さい。


6.目標の二桁(10点)達成!

2学期の中間テストが終わりました。

ヤマシンはとても喜んでいます。

なぜならヤマシンは目標であった二桁を達成したのです。

ただ、二桁と言っても10点でしたが・・・。

それでもヤマシンは大喜びです。

私はヤマシンが家に帰る前にお母さんに連絡をします。

そして、10点を取れたことをたくさん褒めてもらいました。


7.勉強の仕方が分かりやる気になってきたヤマシン!

2学期の期末テストの1週間前。

またまた、放課後学習会が始まります。

このときは、同じクラスの勉強が苦手な子も加わりました。

そのため、テストにでる問題を教えるわけにはいきません。

ただ、中間テストで目標だった二桁をとることができたヤマシンは勉強に前向きになっています。

そこではテストに出る問題を教えることはしませんでしたが、問題集の基本問題を何度も解いていました。

勉強の仕方が少し分かってきたようです。


8.テスト返し!正解に×がついている子は持ってきて!

2学期の期末テストが終わりました。

ヤマシンの点数は9点です。

私がテストを返すとヤマシンはとても落ち込んでいました。

テストの解説を終えた私はクラスの子どもたちに声をかけます。

「もし、正解なのに×が付いている場合は持ってきて!」

すると3人の子どもが私のところにやってきます。

「先生!これ正解じゃないですか?」

「あっ、本当だゴメンゴメン!
「はい!○!+1点だね!」


9.やったーー!これで二桁!目標達成!

2人の確認を終えて前を見るとヤマシンがとても嬉しそうな顔で私を見ています。

「先生!先生!これ、正解でしょ!」

「あっ、本当だゴメンゴメン!」
「はい!○!+1点だね!」

私がテストの点数の横に+1と書くと、ヤマシンは笑顔になります。

そして、クラス中に聞こえる大きな声で喜びを表現します。

「やったーーーー!」
「+1点ーーーー!」

「コレで二桁ーーーー!」


10.勝手に人のテストを見るな!

ヤマシンの喜びの声を聞いたクラスの子がザワつき始めます。

『+1点で二桁?』
『ってことは、さっきまでが9点で今は10点ってこと?』
『ヤマシン、自分の点数バラしてるけど大丈夫?』

すると、ヤマシンと一緒に放課後学習会に参加してる信二くん(仮名)が声をかけます。

「ヤマシンってテスト9点だったの?」
「そして、今、10点になったんでしょ!」

これを聞いたヤマシンは烈火のごとく怒り出します。

「先生!信二くんオレのテストを勝手に見た!」
「人のテストを勝手に見るなんてひどすぎる!」
「先生!信二くんを注意して!怒って!」


11.信二くんは見てないよ!自分で発表したんだよ!

『イヤ、イヤ、イヤ、信二くんは見てないよ!』
『自分で点数を発表してたじゃん!』

私を含め周りの子が同じことを考えたでしょう。

「いや~、信二くんは見てないと思うな~。」

「見たに決まってるじゃん!」
「そうじゃなきゃ、オレが10点だって分かる分けないじゃん!」
「勝手に見たんだよ!」

「ヤマシン、落ち着け!」
「いいか、お前はテストの点が1点、上がっただろ。」
「そして、やったー、これで二桁って言ったよな。」

「うん!言ったよ!」

「ってことはさ、9点が10点になったとしか考えられないじゃん。」


12.はぁ?先生、何を言ってる?意味が分からないんだけど?

みんなにテストの点をバラされて(?)「カッ」となっているヤマシンに、私の説明を理解する余裕はありません。

「二桁なんだから、30点かもしれないじゃん!」
「もしかしたら98点かもしれないじゃん!」
「なんで10点って決めつけるんだよ!」

「落ち着け。+1点になったよね。」
「そして、二桁になったよね。」
「ってことは9点しかありえないでしょ?」
「もし、19点だったら+1点で20点だけど、これで二桁とは言えないよね?」
「だって最初から二桁なんだから。」

するとヤマシンは私に暴言?を吐きます。

「はぁ?先生、何を言ってるの?」
「意味が分からないんだけど!」
「とにかく、信二くんを怒ってよ!」
「人のテストを勝手に見るのはダメなことでしょ!」


13.信二くんゴメン!

私は信二くんを見ました。

すると、信二くんは申し訳なさそうな顔で私を見ています。

そのとき、私の頭の中に信二くんの声が聞こえてきました。

『先生、ごめんなさい。』
『僕が悪いんです。ごめんなさい。』

この言葉(?)を聞いた私は信二くんに注意をします。

「信二くん!」
「友だちのテストを勝手に見ちゃダメだぞ!」
「それをみんなに教えちゃダメだぞ!」

これに対して信二くんが答えます。

「ヤマシン。テストを勝手に見てゴメンな!」
「もう2度としないから!許してよ!」

「分かったよ!許すよ!」
「もう2度と勝手に見ないでよ!」

私を含め、クラスの全員が信二くんの対応に涙した瞬間でした。

※この日の放課後、落ち着いたヤマシンにノートに書いてじっくり説明をすると、自分のミスに気づいてくれました。
※自分が勘違いをしていたことに気づいたヤマシンは、スグに信二くんに謝りに行きました。

 

このブログは、筆者の経験を元に作成しています。ただし、個人情報や学校が特定ができないように事例を少し変えて作成しております。掲載している情報により生じたいかなる損害に関しても、筆者が責任を負うことはできません。