深い深い海の底

 

冷たい水の中、しずかで、真っ暗な海の底に

 

大きな卵が横たわっていました

 

その大きな卵に耳をあてると・・かすかにドクンドクンと鼓動が聴こえてきます

 

その卵は生きていました。

 

卵はいいます

「ここは暗くて、寒くて、凍えそうだ・・誰もボクのところにきてくれない。

ずっとずっと気が遠くなるほど長い年月・・ここにいた。

だからここから連れ出してほしい。温かくて孤独じゃないところに連れて行ってほしい」

 

そこで、私は人魚たちやクジラやイルカたちを呼び、一緒にその卵を持ち上げて

南の島目指して進みました

 

ようやく南の暖かい海の流れを感じはじめ

小さな小島の砂浜に卵を置くことができました

 

そこはとても温かく、穏やかな風がゆったりと流れる気持ちのいい場所でした。

ホッと安心したのもつかの間、卵はいいます

 

「まだだよ!こんな砂浜に置き去りにしないでよ。

さみしいよ。風があたって寒いし、怖いよ!!」

 

どうしたものか、、と思っていると、ウミガメが集まってきました。

ウミガメはいいます

「砂の中はとてもあたたかいわよ。わたしたちはここで自分の卵を産むの。

そして砂の中であたためられて、子供たちはやがて

卵の殻を破ってでてくるのよ^^」

 

そこで私はウミガメさんたちにお願いして一緒に巨大な穴を掘り

そこに卵を埋めました。卵はとても喜びました。

安心で安全で穏やかでいられる場所になったようです。

 

それからずっと長い月日・・

私は埋められた卵の側にいました。

さみしくならないよう常に話しかけ

雨の日や太陽の光が照り付ける日はパラソルをかかげ

寝る時もずっとそばにいました。

 

ずっとずっと待っていましたが、卵は殻を破って

砂からでることはありませんでした。

 

私は悲しくなって泣き出しました。

「どうしてでてこないの?こんなに一生懸命しているのに。

どうしてでてきてくれないの??寂しいよ!悲しいよ!!」

子供のようにワンワン泣きました・・・

 

泣いて泣いて泣き疲れたころ、ようやく卵が話してくれました

「これまで色々ありがとう。

自分も出てきたいと思う。殻から出て、

温かい砂から飛び出していきたいと思う。

だけど、また温かさが足りないんだ・・勇気もまだ足りない・・

だから、キミがボクの代わりに外の世界をいっぱい見てきてよ!

ボクがでてくるのをこの小さな島でずっと一人で待ってるんじゃなっくて

ここからいろんな世界を見に行ってほしい。

キミが体験したすべてがボクの勇気になり、暖かさになる!

ボクたちはつながっているんだ。だから一人じゃない。

キミが感じたことすべて、ボクにも感じることができる。

ふりかえってごらん?

ちょうど迎えがやってきた!」

 

 

涙を拭いて振り返ると、空は青く晴れ渡っていた

そして遠くに船がとまっているのがみえた。

 

思わず「お~~~い!!」と手を振ると

船にいる人達も「おお~~い!!」と手を振り返してくれた

 

「いってくる!!勇気を出していってくる!!」

 

そういって私は走り出した。船に向かって。

新しい世界に向かって。

 

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人生の節目は色々なことが起こります。

時に長いトンネルのように感じることもあります。

 

でも、そのトンネルの先には新しい世界が広がっています。

 

そのトンネルの長さを人と比べて、自分はどうして乗り越えられないんだ・・と

責める必要はありません。

その人その人によって、魂も違う、感受性も違う、歩む道も違うのです。

どちらがいいとか、どちらが優れているとかないのです。

 

今、私たちは、順調に自分の歩みを進めているのです。