シリーズ 秦野市のコンプライアンスを考える(3)最終回 | 地方政治の未来を創る 秦野市議会議員  古木勝久

シリーズ 秦野市のコンプライアンスを考える(3)最終回

おはようございます。今日から7月です。 

 

28日に千葉県八街市で小学生の列にトラックが突っ込んで、児童5人がはねられ、2人の幼い命が奪われ、1人が意識不明の重体、2人が大ケガをするという大惨事が起きました。ご家族や関係者の皆さんからは居たたまれない無念の思いが伝わってきます。お亡くなりになった2人の子どもたちには心よりお悔やみ申し上げます。また入院中の児童には一日も早いご回復を願わずにはいられません。
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◆痛ましい福知山線の列車脱線事故のこと


コンプライアンス、リスクマネジメントの問題では、どうしても忘れることができない事故があります。2005年、平成17年4月25日に西日本旅客鉄道(JR西日本)の福知山線(JR宝塚線)で発生した列車脱線事故です。乗客と運転士合わせて107名が死亡、562名が負傷しました。

 

国会や報道等でも、この事故に関するコンプライアンス、リスクマネジメント、リスクアセスメントの取り組みが話題になりました。
〇組織の適切な人員や仕事の組み立て方に無理はなかったのか
〇適正な人員配置、過重労働、人権は守られていたのか
〇日勤教育・研修は適切だったのか
当時の事故検証報告や新聞報道を振り返ってみると、上記のような疑問が浮き彫りになっています。


◆リスクアセスメントへの取り組み
この福知山線脱線事故を教訓に、リスクアセスメントへの取り組みを強化し、ヒューマンエラー非懲戒などの新制度が打ち出されました。

 

「懲罰的な精神論で、運転士に強いストレスを与えている」と批判された日勤教育(ミスをした乗務員への再教育)の見直しなどが行われたと、報道などが伝えていました。


◆組織に“ひずみ” 仕事に制度疲労は付き物
話題がだいぶ蛇行、横道にそれてしまいました。中々、秦野市の話題に入っていきませんが、お許しください(笑)

 

リスクアセスメントとは、組織内にある様々な危険な要因を見つけ出し、それによって将来、起こり得るアクシデントなどからリスクの大きさを想定、予測し、その対策を講じていく手法だそうです。

 

ここから本市の話題になります。

残念ながら本市にはリスクアセスメントという取り組みがないようです。


厚生労働省のリスクアセスメントの事例を見ると、やや領域が異なるように思えますが、手法を応用することは可能です。何といっても組織の特性を捉えることから始めていただきたいと思います。難しい話ではないと思います。

 

秦野市の従来の「行財政改革」、つまり「簡素で効率的な行政運営」というお題目から一度離れて、組織の特性である構造的な“ひずみ(*1)や行政全般にある制度疲労(*2)にメスを入れていくような、本物の行財政改革に向かっていってほしいものです。

 

そのためには多くは望みません。不断の事務改善と業務の在り方のチェック、まずは、この仕組みを作り上げることから始めていただきたいと思います。 

 

これまで3回にわたってコンプライアンスのことについて考えてみました。長文ですがお読みいただきありがとうございました。

 

本市の「行革」あるいは「行財政改革」では簡素で効率的な行政運営が第一義的に考えられてきました。こうした視点も重要ですが、第2回定例会の一般質問から、リスクアセスメントZero DefectsQuality Controlではありません)といった考え方も必要ではないかと痛感しました。この分野は官民両方の仕事で経験してきましたので、今後も注目して参りたいと思います。(了)


【参考】

♯1 「行政がゆがめられた」という表現が、昨今、盛んに使用されます。加計学園や放送関連会社と総務省の接待問題、難しい言葉で恐縮ですが、行政にある「無謬(むびゅう)性の原則」などが、堀水路での答弁でも顕著に表れていました。これらを総称して「組織に付き物の構造的な“ひずみ」と言っても過言ではないと思います。


♯2 制度疲労とは「運用されているうちに社会状況が変化し、制度の目的と実情がずれてしまい、うまく機能しなくなった状況」という一般論です。案外、忘れがちな話ですが、この制度疲労も避けれられない課題ではないかと思います。


◆東洋経済オンライン~根深く残る組織の文化
https://toyokeizai.net/articles/-/244391


◆厚生労働省 職場のあんぜんサイト~リスクアセスメント
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/yougo/yougo01_1.html