公共施設再配置計画とサンディ・スプリングス市 | 地方政治の未来を創る 秦野市議会議員  古木勝久

公共施設再配置計画とサンディ・スプリングス市

”矛盾”が見えてきた計画

秦野市公共施設再配置計画についてコメントする前に、この計画の基本的な考え方に酷似した事例を紹介します。

NHKクローズアップ現代 2014年4月22日(火) 放送 “独立”する富裕層 ~アメリカ 深まる社会の分断~
番組解説

100万ドル以上の資産を持つアメリカの富裕層。その富裕層が今、自治体の在り方を変えようとしています。貧富の格差による社会の分断が進むアメリカ。
富裕層は税金が貧困層のためばかりに使われていると反発。

アメリカ国内では、自らが住む地区を周囲と切り離し、新たな自治体を作る動きを強めています。この先陣を切っているのが、サンディ・スプリングス市です。

サンディ・スプリングス市民の平均年収は1,000万円近くだそうです。医師や弁護士、経営者などが多く住む高級住宅地です。市が誕生したのは、今から10年前の2005年です。住民投票で94%の圧倒的賛成を得て、それまで属していたフルトン郡から分離したのです。小さな政府の実現です。

税の公平性、公益の採算性と私益性、公共サービスの選択制等々の視点が、富裕層だけでなく中間層にも支持されたのです。中間層と言っても米国の場合、相当の年収があるそうです。当時のサンディ・スプリングス市の人口は9万4千人です。ほとんどの公共サービスが業務委託・民営化されました。
勿論、議会は縮小、6名の議員構成だったと思います。
市長1名、事務職員を4名までに削減しています。他に消防、警察の組織がありました。

これは極端な事例ではありません。

そう遠くない、「近未来予想図」になるかもしれません。

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古谷義幸市長の政策 ~選択と集中~

現在、古谷市長が進めている秦野市公共施設再配置計画の考え方の基本指針に、非常に似た所があります。

ひょっとしたら、この「計画」の源泉かもしれません。

*参考*

本市公共施設再配置計画と深くかかわりのある東洋大学の公民連携を推進しているグループが、サンディ・スプリングス市の事例を高く評価し紹介しています。

2008年2月に開催されたシンポジウム「サンデイ・スプリングスの衝撃 -完全PPP都市の出現-」


秦野市公共施設再配置計画の基本的な指針

公共施設を使う人、使わない人 税の公平性の論理

【引用*抜粋】

古谷市長の進める「公共施設再配置計画」の大きな柱となる、
受益者負担の公平性、公共施設を使う市民と使わない市民との税負担の公平性を保つとともに、現在の市民が応分の負担をすることにより、将来市民の負担を減らしていくことが必要となること~

本市の公共施設再配置計画は、マスコミの後押しを受けて全国的にも知られるようになりました。

この「計画」は、財源対策、建物老朽化、そして市民負担強化策とセットになった公共施設のマネジメントになっています。

しかも最近は地方創生会議の人口減少論も追い風にしています。

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見落としていることは、行政の責務と法的義務です

それぞれの建物の長期修繕計画等、地域の自治計画、税収と地域経済成長戦略と行政計画、国、県への財源保障等については、全く示されていません。特に公民館については、公民館の存在理由(法的根拠)をも骨抜きにしようといういう考え方です。

公民館の次は、図書館を狙っているのでしょうか。

どこに向かうのか秦野市公共施設再配置計画。

真の狙いは何か? 

将来の秦野、30年後、40年後の未来を見据えているとは、とても思えません。

日本の地方自治の精神は、長い間、先人が積み上げてきた、支え合いの社会の構築であり、相互扶助の思想です。

 

これまで私は、この「計画」について、様々な角度から29回に渡ってコメントさせていただきました。

この「計画」、当初より勢いはなく、矛盾が見えてきたようです。

矛盾を抱えながら、”ほころび”が出はじめてきました。

中断してしまっている事業もあります。

矛盾と言っても、おそらく行政は、矛盾だとは思っていないようです。今後とも、秦野市公共施設再配置計画の思想の矛盾点と課題を追究していきたいと考えています。