『二宮金次郎』を読む
暑い日に、厚い本はきつい?!
毎日暑い日が続きますが、こんな時は家の中での読書に限ると思いきや、やはり体力は消耗します。笑
約680ページの文庫本、童門冬二氏の大作『二宮金次郎』を、少し時間がかかりましたが、三週間かけて、なんとか読み終えました。
直江兼続や上杉鷹山、大久保彦左衛門、新撰組などを著わした童門氏
ならではの切り口で非常に面白い一冊でした。
これまでも二宮金次郎にまつわる本は何冊か読みましたが、多少、贔屓目【ひいきめ】ですが、童門氏の『二宮金次郎』は、尊徳思想の精粋の域を極めているように思いました。
童門冬二氏、つまり太田久行氏は1970年代、美濃部都政のブレーン、
政策室長を務めて都庁を退職した方です。
氏ならではの切り口とは、行政経営や地方自治、まちづくりから見て、二宮金次郎の歴史的役割とその思想を分析しているところでしょうか。
多くの人が尊徳思想を絶賛しています。
氏は、『上杉鷹山』では上から(武士側から)の改革を、『二宮金次郎』では、下から(農民側から)の改革と地域復興を描いています。
かつて長澤源夫氏が『二宮尊徳のすべて』(人物往来社)で、戦後間もない頃、GHQの高官が「二宮尊徳は近世日本の生んだ最大の民主主義者だ」と評価していると記述しています。
しかしながら、戦後68年経った今も、まだまだ、二宮尊徳 の戦前の”名残”が生きているようです。
今市市長、栃木県知事を務めた福田昭夫氏は
「戦前の教育を受けた方々の中には、『勤労奉仕』『刻苦勤励』『軍国主義』というイメージと『軍国少年の鑑』と二宮金次郎がセットになっていたため、実際の二宮金次郎は無視されていた」のではないかと言っています。
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童門冬二氏は、当時、県知事だった福田氏にこう言っています。
「尊徳は皆さんと同じ、いわば地方公務員なんですよ。地方公務員として各種の事業を成し遂げた方です。ですから、その実像と思想に触れてみたらどうですか?」と・・・。
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寝苦しい、真夏の夜の読書は体力のいることです。
しかし、これもまた”一服の涼”かもしれません。
