南足柄市文化会館の例
公共施設の生き残りをかけた南足柄市
平成21年9月、文化会館の休館が公表されました。新聞にも大きく取り上げられました。
今日、当時の担当者に取材をさせていただきました。
平成4年から20年経ったこの建物、良質の音楽や演劇等を市民に提供していこうという構想で建設されました。
順調に来ていましたが、リーマンショック前後からの企業の法人市民税の減収、急激な落ち込みにより、「2年間の一時休館、見直し」をしながら、再起をはかるという市の提案を公表せざるを得ませんでした。
しかし、市民の休館反対の陳情、議会の否決、34の全自治会の反対などで休館は、早々に撤回を余儀なくされました。
勿論、この間、担当者が仕事に全力を尽くしたことは想像に難くありませんでした。
いったん休館すると、文化会館の存続も危ぶまれるのは承知だったと言います。一般的に、この手の建物は、休館すると再度立ち上げるのは、至難の業だと言われています。
様々な技術が入り、再びフルセット集積するには大変だということです。
それでも、「ない袖は触れない」。
しかも、民意は行政の思惑と反対方向にありました。
きっと、絶体絶命の中を担当者は、無我夢中だったと思います。
起死回生の秘策などあろうはずもありません。担当者は必死に、この事態を市民の皆さんに説明ではなく、納得していただくために動きました。
いたずらに不安や財政危機だけを煽り、数値を並べるのではなく正直にどうしたら良いか、丁寧にその現実を指し示しました。
市は文化会館の事業協会と自主事業の廃止、入場料値上げ、職員の給与・地域手当カット等、存続のための様々な提案をしました。
また平成23年4月には文化会館管理基金、公共施設修繕積立金を設立しました。
市民の皆様がこういう事態の中で、意識も少しずつ変わったといいます。
公共はすべてタダではない、かかるものはかかるんだと思ってくれるようになったと担当者は振り返ります。
基金にも協力的になって、寄付が集まるようになりました。
平成24年度から、文化会館長期修繕計画が立ち上がりました。国の100/100の社会資本整備総合交付金を活用して、会館屋上の大規模修繕を行うということです。
既に平成23年度決算では、自主事業打ち切りで貸館という不利な状況下でも、落ち込んでいた会館収入も平成21年度比で169%に達しました。
”災い転じて福となす”ではありませんが、様々な紆余曲折はあったものの、市民と行政の合意形成の方法に見るものがあります。
担当者の方から、並々ならぬ思い、まるでNHKの「プロジェクトX」を語ってもらったような気になりました。
反対に対応する、一方的な押し付けではなく、しなやかな行政手法が垣間見られた一例かもしれません。
今後とも、この文化会館の運営の行方を、しっかり見守りたいと思います。
担当者いわく、何よりも嬉しいことは「市民の皆さんの意識が変わったこと」だそうです。