単行本の方は2015年刊行のエッセイ集です。
80編のエッセイの中身は,思い出,好きなもの,子育て,そして自身の作品たち。
正直な気持ちが素朴な言葉で書かれています。
印象に残っているのは,「書店員さんのカリスマ性」。優れた作品を見抜くとか,かっこいいPOPをつくるとか,だけではないエピソードが書かれていました。
辻村さんのサイン会で,並んでいる人たちに声をかけて緊張をほぐし,辻村さんにはお客さんたちの情報をさりげなく伝えるという細やかな心遣い。こういう人が本当のプロなのだなと感じさせられました。
もう1つは,「犬と恐怖の記憶」。シャーロック・ホームズのシリーズの中でも有名な『バスカヴィル家の犬』の思い出を語る話。私も同作でホームズのファンになった一人なので共感しました。
全編を読んでいて,私が読んだ辻村の『ツナグ』『オーダーメイド殺人クラブ』『島はぼくらと』『サクラ咲く』などの作品執筆や当時の状況などもうかがわれ,楽しめる内容となっていました。