みすず書房のPR誌です。
水島治郎 氏の連載「『隠れ家と広場』からみた移民都市アムステルダムのユダヤ人」は,保育園がユダヤ人の子どもを救出させる役割を果たしていたという話の続き。
女子大生等の協力者が子どもを連れて歩き,次の協力者に引き渡す仕組みができており,学生達の演技や子どもの変装,子どもの数が減っても帳尻が合うように名簿を改竄するなどの努力がなされていたのだとか。それでも救えた子どもは全体の1割少しだったそうです。
そして,最後には協力者たちもまた悲劇の運命をたどる人,なんとか逃れた人と様々。それでも生き残れた人たちがいたのが救いです。カトリック,プロテスタントを問わず,宗教家が救出に大きな役割を果たしたというのも見逃せません。
西 成彦 氏の連載「死者は生者のなかに」もまた,ユダヤ人をめぐる悲劇を扱った内容。こちらは,映画化もされた『ソフィーの選択』など,小説に描かれた人間模様を紹介しています。ユダヤ人の弱みにつけこむ密告者やゆすり屋が,生活も命も脅かす存在だったようです。
前者での救出協力者に比べると雲泥の差ですが,当時はそういった行為が横行していたらしいです。戦争が人間を歪めてしまうということでしょうか。
同時に,日本でも戦時中は似たようなことがあったのではと思ってしまいました。『はだしのゲン』をみても,戦争反対論者,朝鮮人,被爆者に対する差別や嫌がらせが描かれていたように記憶しています。
新刊で注目したのは,次の本です。
ラグラム・ラジャン『第三の支柱 〜コミュニティ再生の経済学』
※三本の支柱とは,「市場」「国家」「コミュニティ」を指すのだそうです。前の2つだけにとらわれず,地域の経済・政治・生活の向上を目指すことが社会の再生につながるとのこと。形だけの地域振興にならないための方法,知りたいです。
ライザ・マンディ『コード・ガールズ 〜日独の暗号を解読した女性たち』
※アメリカでは1万人以上の女性が第二次大戦中に暗号解読の仕事に従事し,成果を挙げ,それが女性の地位向上にもつながったということです。
A・S・カーン/W・パトリック『疾病捜査官 〜感染症封じ込めエキスパートの事件簿』
※書かれたのは2016年,コロナ以前ですが,エボラ出血熱やSARSにも対応してきた専門家の体験談。コロナ対応の参考にもなるのでは。