【高齢者虐待防止と権利擁護】第5回:R6介護報酬改定:高齢者虐待防止措置未実施減算~研修の定期的 | 梅沢佳裕(高齢者福祉研究☆梅沢Lab)

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第4回に引き続き「高齢者虐待防止措置未実施減算」について、取り上げていきます

◆高齢者虐待防止のための定期的な研修の実施
 今回の介護報酬改定での「定期的な研修の実施」については、虐待防止のみならず、さまざまな法定研修の受講が義務化されました。高齢者虐待防止措置未実施減算の算定要件となっている研修受講の義務化の背景について考えてみると、これまで厚労省が毎年調査結果を報告している「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果」とも関連があるのではないかと感じています。この調査の中には下記の表1のとおり興味深い統計データがあります。

●虐待の発生要因(複数回答)
                件数・割合(%)により降順

  1. 教育・知識・介護技術等に関する問題    480件 56.1%
  2. 職員のストレスや感情コントロールの問題  197件 23.0%
  3. 虐待を助長する組織風土や職員間の関係の悪さ、管理体制等  193件  22.5%
  4. 倫理観や理念の欠如    153件 17.9%
  5. 人員不足や人員配置の問題及び関連する多忙さ  99件  11.6%
  6. 虐待を行った職員の性格や資質の問題    85件  9.9%
  7. その他    30件  3.5%

(注)都道府県が直接把握した事例を含む 856 件に対するもの。

出典:令和4年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果」

この調査結果は、賛否両論はあるにせよ、毎年1~2位を占める「教育・知識・介護技術等に関する問題」という発生要因を解決する目的として「スキル研修」の受講が必須のこととなったと考えられます。とはいえ、ただ受ければ良いというわけではないのは、皆さまもお分かりのことと存じます。

◆定期的な研修の受講
では研修はどのように実施する必要があるのでしょうか。
【目的】何のために研修を実施するのか
 研修は、受講することが目的ではなく、本来は高齢者虐待の防止になることが目的です。

【学び方】何をどのように学ぶのか
 虐待防止といっても研修プログラムはさまざまあります。その研修によってレベルも研修の方向性も異なります。階層別に自分が初級・中級・上級(基礎・発展)などどのレベルの研修を受けることが効果的なのか、よく見極めながら受講することをお勧めします。

【研修企画】研修の年間計画、各研修の企画
 研修は場当たり的に実施するのではなく、計画的に各スタッフが年2回以上の受講を完了できるようにします。研修内容は、虐待防止と関連する分野、例えば認知症ケア研修やメンタルケア、アンガーマネジメントなどの研修も効果的だと厚労省も言及しています。

【小規模事業所】小規模であるため講師予算や業務多忙の関係で研修機会を確保できない
 小規模事業所では、これまで互いに交替で講師を務める、あるいは他部署の管理者やケアマネなどに講師をお願いするなどで急場を凌いできたところもあったのではないかと思います。しかし、今後「高齢者虐待防止未実施減算」については、各市区町村に対しても指導強化の通達も出されており、今まで以上に厳しいチェックが行われることは必至です。そのため、小規模事業所であっても例外は認められないのではないかと思われます。
 そこでZoomを使用した双方向の遠隔研修の参加やストリーミング配信動画の閲覧など、外部の研修企画へ参加することで、本算定要件を満たすことにもなります。これらを活用し計画的な研修受講を促して頂きたいと存じます。

【次回テーマ】第6回:R6介護報酬改定:高齢者虐待防止措置未実施減算~担当者の配置


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このブログは、高齢者虐待防止研究を専門分野とする筆者(高齢者福祉研究☆梅沢Lab主宰 梅沢佳裕)が、これまで発出されてきた論文、専門誌、Web、その他さまざまな知見や情報をもとに、ブログ「介護施設における高齢者虐待防止と権利擁護」として配信しているものです。
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