◯声のキャパシティを広げる
声づくりというと、何か新しく特別な音色の声をつくることのように思われます。しかし、どんなに美しく軽やかな声に似せても、ものまねにしかすぎません。表現していくことが問われる世界に、ものまねは通用しません。
私のいう声づくりとは、人間の最もしぜんな声、その人の筋肉、体、顔、性格、全てを踏まえた上で、最もふさわしい声を、つくるというよりは引き出すことです。
これまで眠っていて使われてこなかった声を目一杯使えるように起こすことといってもよいでしょう。でも、なぜ使わなかったのかというと、使えなかったのです。一つは、イメージの欠落です。次に、発声に、心身が伴っていないことが原因です。
日本人の場合は、自分に合っていない不自然な声の使い方をしている人が多いのです。生まれた頃に戻って、声に対する関心をもつとともに、声そのものに目覚めさせた方が早いと思ったので、あえて声づくりと言ったのです。
声が体から自由に自在に出るようになってきたら、それを使いたくなってきます。武器を手にしたらそれを使いたくなるのと同じです。アーティストは、その闘いを自分の作品のなかで行うのです。ヴォーカルにとって、その武器が声、その強さが声のキャパシティなのです。