<また出る過去問分析 社会福祉(社会福祉の理念)>
再び同じような問題が出題される可能性の高い過去問をランダムに選んで、検討を加えていきます。
【令和4年(後期)社会福祉 問4】
次のうち、社会福祉の理念に関する記述として、適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
A 権利擁護とは、当事者が持っている権利を擁護し、虐待や差別等から当事者を守ることである。
B エンパワメントとは、当事者自身が力を得て、自らの力で問題を解決していけるように側面的に支援することを意味している。
C ソーシャル・インクルージョンとは、国民に対して最低限度の生活を保障すること(最低生活保障)である。
D ノーマライゼーションとは、障害の有無にかかわらず、だれもが地域で普通に暮らせる社会を目指す理念である。
(組み合わせ)
A B C D
1 ○ ○ ○ ×
2 ○ ○ × ○
3 × ○ ○ ○
4 × × ○ ○
5 × × × ×
【解答・解説】
A 適切
そのとおりですが、これはほとんど「権利擁護とは、人の権利を擁護することである。」としかいっていないに等しいですね。
「社会福祉」で「権利擁護」というと、成年後見制度や日常生活自立援助事業などの制度を意味することのほうが多い気がします。
「理念」としての「権利擁護」という場合は、「アドボカシー」の説明をしてほしい気がします。
アドボカシーとは、意思表示が困難な利用者等に代わって、援助者が権利や日常生活のニーズを主張することをいい、代弁、権利擁護などと訳されます。
ただ、「権利擁護とは、権利を擁護することである。」が間違っているとはいえないので、「適切」とするしかありません。
B 適切
エンパワメントとは、社会的に抑圧された立場にあり、パワーの欠如(パワレス)の状態にある人が、本来もっているパワーを取り戻し、できる限り自立した生活ができるように、側面的に支援することを意味します。
利用者の潜在能力の開花への期待を前提とする理念です。
C 不適切
ソーシャル・インクルージョンとは、社会的に排除・差別されやすい人を社会の中に取り込んでいこうという理念をいいます。
1980年代から1990年代にかけてヨーロッパで普及してきた理念であり、「社会的包括」あるいは「社会的包摂」などと訳されます。
「(国が)国民に対して最低限度の生活を保障すること」という説明は、ナショナルミニマムについてのものです。
現代の社会福祉の制度・政策は、ナショナルミニマムの保障を基本に置いて実施されており、わが国のナショナルミニマムは、具体的には、「日本国憲法」第25条(生存権等)と「生活保護法」によって保障されています。
D 適切
ノーマライゼーションとは、障害の有無や、高齢、子どもであること等にかかわらず、だれもが地域で普通に暮らせる社会を目指す理念をいいます。
当初、バンク・ミケルセン(Bank-Mikkelsen,N.E.)の提唱をきっかけに、デンマークの知的障害者運動の中でスタートしましたが、今日では、すべての福祉分野に共通する基本理念となっています。
設問文では、「障害の有無にかかわらず」としており、高齢、子どもであること等に触れていないので少し微妙なのですが、(組み合わせ)との関係から、答えを選ぶのであれば、Dは「適切」と判断するしかありません。
以上より、正解は2となります。
【コメント】
ノーマライゼーション等の社会福祉の理念は、「社会福祉」における頻出重要基本事項なので、しっかり、迷いなく問題を解けるように準備しておく必要があります。
ただ、令和4年(後期)の「社会福祉」の問題は、全体的にちょっとクセがあり、「読みづらい」という気がしました。
問2の「日本国憲法」第11条・第12条・第13条・第25条の問題も、ほぼ条文どおりなので、条文をそのまま引用すればいいのに、「とされる」など、少しだけ言葉を加える、しかも、第11条は2文あるので「とされる」を2回使っているのに、第12条は2文あっても「とされる」を第2文の後ろの1回しか使っていない、といった感じです。
本問(問4)では、Aについては、「権利擁護」を「理念」として持ち出したのに、なぜ「アドボカシー」につなげなかったのか、すっきりしない感じがあります。
Dでは、「障害」をなぜ「障害等」としなかったのか、ノーマライゼーションは、今日では、すべての福祉分野に共通する基本理念となっているので、「障害」に「等」をつけないのであれば、「当初は」などと限定する必要があったのではないか、と思います。
たかが「等」、とはいえません。
しかし、このような問題も成立してしまう公的試験は少なくないので、本番では、最も正解に近い選択肢にマークしてくるしかありません。
さて、社会福祉の理念については、<令和2年(後期)「社会福祉」問1>で出題されているユニバーサルデザインも、しっかり押さえておきましょう。
ユニバーサルデザインとは、障害のある人に限らず、すべての人にとって使いやすい製品、環境、情報づくりをめざす考え方をいいます。
ユニバーサルデザインは、アメリカのロナルド・メイス(Ronald Mace)が、バリアフリーの概念に代わって提唱した考え方です。
バリアフリーが、障害のある人が生活するうえでの障壁を除去することをめざす考え方であるのに対して、ユニバーサルデザインは、初めからすべての人が、障害の有無や年齢に関わらず利用できる製品、環境、情報づくりを行うことをめざす考え方です。
ユニバーサルデザインについて、ロナルド・メイスは、次のような7原則を挙げています。
≪ユニバーサルデザインの7原則≫
① 誰にでも公平に利用できる。
② 使う上で柔軟性に富む。
③ 簡単で直感的に利用できる。
④ 必要な情報が簡単に理解できる。
⑤ 単純なミスが危険につながらない。
⑥ 身体的な負担が少ない。
⑦ 接近して使える寸法や空間になっている。
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