今年最初の記事となります。
今年もよろしくお願いいたします。
【令和元年(後期)保育の心理学 問5】
次の文は、生活や遊びを通した学びに関する記述である。【Ⅰ群】の記述と、【Ⅱ群】の用語を結びつけた場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
【Ⅰ群】
A 相手の行動を観察し、その人の意図、期待、信念、願望などを理解するようになると、相手の行動を説明したり、予測したりするようになる。
B 文化的に規定され、ステレオタイプ化された知識で、日常的なできごとを理解したり解釈したりできるようになる。
C 内発的動機づけを構成する要素で、自分の知らないことに興味をもったり、興味をもったものを深く探究したりしようとする。
D ある行動をすると、特定の環境変化が引き続いて生じることに気付いて、その行動を繰り返し行うようになる。
【Ⅱ群】
ア 帰属理論 イ 心の理論
ウ モニタリング エ スクリプト
オ 知的リアリズム カ 知的好奇心
キ 観察学習 ク オペラント学習
(組み合わせ)
A B C D
1 ア ウ オ キ
2 ア エ オ ク
3 イ ウ カ キ
4 イ エ オ ク
5 イ エ カ ク
【解答・解説】
A イ
「心の理論」は、プレマック(Premack,D.)とウッドラフ(Woodruff,G.)によって提唱された理論で、自分や他者の行動を予測したり、説明したりするために使われる心の働きについての知識や原理のことをいいます。
子どもは、幼児期までに「心の理論」を獲得し、相手の行動を観察し、その人の意図、期待、信念、願望などを理解するようになることで、相手の行動を説明したり、予測したりすることができるようになります。
B エ
スクリプトとは、特定の文脈で起きる出来事について、文化的に規定され、ステレオタイプ(固定観念)化された時間的・因果的知識のことをいいます。
例えば、子どもが、保育所での生活を繰り返すことにより、保育所での生活の流れの見通しをもつようになれば、保育所での生活の流れについてスクリプトを獲得したことになります。
C カ
知的好奇心は、内発的動機づけを構成する要素で、知的好奇心が培われることによって、子どもは自分の知らないことに興味をもったり、興味をもったものを深く探究したりするようになります。
なお、内発的動機づけとは、外部から与えられるほうびや罰などの外的な強化ではなく、発見の喜びや知的好奇心や探索心に基づいて生じる動機づけをいいます。
D ク
オペラント学習は、スキナー(Skinner,B.F.)が動物実験に基づいて提唱した学習理論で、生活体が、ある行動をして、特定の環境変化が引き続いて生じることに気づくと、その行動を繰り返し行うようになるとしました。
彼は、箱内の白ネズミが、備えつけられたバーを押すと餌が出てくる実験装置を用い、特定の行動(バーを押す)の直後に報酬(餌)が与えられることで、条件反応が自発的に形成されるとしました。
よって、正解は5となります。
(補足)
ア 帰属理論
ある結果が生じた場合に、その原因を何に求めるか(帰属させるか)というプロセスを把握するための理論をいいます。
例えば、ある好ましくない結果を、自分のせいにするのか、他人のせいにするのか、というようなことです。
ウ モニタリング
一般的な和訳では「監視・観察」というような意味ですが、「保育の心理学」では、自己の思考の過程を認識し、行動をコントロールしたり、結果を予測・分析したりすることを意味する場合が多いです(セルフ・モニタリング)。
オ 知的リアリズム
自分が知っていること・現実に惑わされて、「見かけ」を「見かけ」として視覚的に捉えられないことをいいます。
例えば、外から見た形を描きながら、実際には見えない中にいる人やものが透けて見えるように描くレントゲン表現(透視描写)などに知的リアリズムが表れます。
少し「保育実習理論」寄りの知識となるでしょうか。
キ 観察学習
自ら経験しなくても、他者の行動を観察することによって、自らの行動を変容させたり、新しい行動を獲得したりすることをいいます。
【コメント】
「保育の心理学」というか、心理学という学問には、言葉遊び的な面があり、経験上、無意識的に分かっている現象について、心理学者の誰かが、意識的に取り上げ、分析的・記述的に説明し、ネーミングした用語がたくさんあります。
それらの用語も、見ただけで大体の意味が分かるものと、分からないものに大別することができます。
本問の用語でいうと、
≪見ただけで大体の意味が分かるもの≫
知的好奇心、観察学習
≪見ただけでは意味が分からないもの≫
心の理論、スクリプト、知的リアリズム、オペラント学習
となるでしょう。
当然ながら、試験対策としては、後者の「見ただけでは意味が分からないもの」をしっかり押さえていくことが重要です。
微妙なものもあります。
「帰属理論」は、日本語的には難しくありませんが、用語を見ただけでは、何が、何に、帰属するのか分かりません。
別の用語である「帰属意識」であれば、自己が、集団に、帰属する意識です。
しかし、「帰属理論」は、ある結果の原因を、何(誰)に帰属させるか、という意味であり、「帰属」の主体・対象が異なってきます。
モニタリングは、一般的には「監視・観察」というような意味ですが、「社会福祉」の相談援助の展開過程で出てきたり、そしてこの「保育の心理学」で出てきたりして、それぞれ少し意味合いが違うので、一般的な和訳である「監視・観察」を知っていても、それだけでは足りないことになります。
もっとも、本問では、「帰属理論」も、モニタリングも、【Ⅰ群】の記述と結びつかない用語なので、重要性はやや低いのかと思われます。
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