『遥かなる海底神殿』 | 梟の転寝

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 「梟の転寝(ふくろうのうたたね)」は、読んだり書いたりの日々を送る私の、日記みたいな、備忘録みたいな、そんな代物です。ちょこちょこっと、あれこれ書いてみますね。

 創土社から出ているクトゥルー・ミュトス・ファイルズに、新作が登場します。

 『遥かなる海底神殿』。

遥かなる海底神殿 (クトゥルー・ミュトス・ファイルズ)/荒山徹
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 今回のお題は、ラヴクラフトの『神殿』(『ラヴクラフト全集5』に収録)。おお、大好物です。盛り上がってきましたよ。

ラヴクラフト全集〈5〉 (創元推理文庫)/東京創元社
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 1917年。ドイツ帝国の潜水艦、U29の艦長、カルル・ハインリッヒ少佐はイギリスの貨物船を撃沈。貨物船の船員の遺体は、月桂冠を被った美しい青年の姿を模した、奇妙な象牙細工を懐に抱いていました。

 ハインリッヒ少佐の同僚、クレンツェ大尉は、この象牙細工に魅了され、我が物とするのですが、以来、U29の乗組員は悪夢に悩まされ、更に事故でU29が航行不能になると、艦内で暴動を起こすのでした。

 暴動を鎮圧したものの、生き残ったのはハインリッヒ少佐とクレンツェ大尉の二人だけ。遂にはクレンツェ大尉も狂気に捕らわれ、象牙細工を抱いたまま、艦外へ、深海の世界へと歩み去ります。

 深海に沈む鉄の牢獄と化したU29に、ただ独り残されながらも正気を保とうとするハインリッヒ少佐でしたが、やがて彼の眼前に、乗組員たちを、クレンツェ大尉を、そして、恐らくは古の時代から数多の船乗りを逃れ得ぬ狂気に誘ってきた、忌まわしき海底神殿が姿を顕すのでした。

 …とまぁ、こんな話。この作品は必ずしもクトゥルフ神話には分類されていなかったのですが、昔、ホビージャパンから発売されていた『クトゥルフの呼び声』のサプリメント『クトゥルフ・ナウ/Cthulhu Now』に収録されたシナリオ、『海底の都市/The City in the Sea』において、ハインリッヒ少佐たちを破滅に導いた象牙細工の正体が、クトゥルフ神話の神格、グルーンの像であると設定されたのです。

Cthulhu Now: Modern Adventures and Background f.../William A. Barton
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 とゆか、『クトゥルフ・ナウ』は『クトゥルフ2010』と同じく、現代を舞台にしたクトゥルフ神話のためのサプリメントではあるものの、英語版は1987年に発売され、第2版が出たのが1992年な訳で、2015年現在、もう“現代”とは言えないような気もしますね。『海底の都市』は、10代どころか、20代のプレイヤーの多くにとっても、生まれる前に書かれたシナリオですし。

 話がやや逸れましたが、来る7月16日に発売される『遥かなる海底神殿』は、『神殿』を題材にして複数の作家が競作するアンソロジーです。

 今回の面子は、荒山徹と小中千昭。…いや、ちょっと待て。荒山徹!? マジでか!!

 私は、『比叡山炎上』に朝松健と荒山徹の合作スタイルを持ち込んだらどうなるかとかゆーネタを長年考察したりしてるので、クトゥルー・ミュトス・ファイルズに荒山徹が参戦と知って、本気でひっくり返りました。「えええ!?」とか、リアルに口に出してしまったし。

 あわてて調べてみたら、荒山徹は以前にもクトゥルフ神話を書いているとの事。いや、これは不勉強でした。この機会に読んでみよう。

友を選ばば柳生十兵衛 (講談社文庫)/講談社
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 で、今回、荒山徹はどんな話を書くのかとゆーと、ですね。

 『海底軍艦『檀君』』。韓国の原子力潜水艦が、独島の………ああ、やりましたか、そのネタを。

 いや、私もね。李承晩ラインは竹島近海の“深きもの”との交易を確保するために設定されたとか、朝鮮秘史的な裏設定をあれこれ考えているのです。去年なんか、済州島の近海で海難事故が起きて、船長が探索者を見捨てて逃げる話をアメブロで書こうとした矢先にセウォル号転覆事故が起きて、お流れになったし。

 まぁ、この件に関しては、ハラハラしながら発売を待つ事にしましょう。

 で、最近、怪獣小説を立て続けに書いてる小中千昭の作品は、『キングダム・カム』。

 小中千昭の事だから、『深淵を歩むもの』みたいにガタノゾーアをネタにするのかな。でも、それだと『神殿』じゃなくて『永劫より』になっちゃうか…。

 そして、荒山徹と小中千昭の競作に加えて収録されますのは、まさかの読者参加企画『海底カーニバル』。

 なんと、菊地秀行の『妖神グルメ』、山田正紀の『クトゥルフ少女戦隊』、朝松健の『邪神帝国』、牧野修の『呪禁官』の、悪夢のクロスオーバー企画。

 私はこういう夢の共演とか大好きなんですが、よりにもよって、こりゃまたなんとも濃い面子だなぁ…。一体、どんな話になるんだろう。まぁ、内原富手夫が登場するなら、クトゥルフも御満悦の闇鍋が出来上がるのは間違いないか。

 えー、例によって、また随分と更新が滞ってました。ここ2ヶ月くらい、毎日毎日、今日こそはブログの更新を再開しようと思ってはいたものの、下書きをいじくり倒しているうちに就寝という日々が続いておりました。ぐぬぬ。

 流石にこう悶々としたまま7月を迎えたくないので、2015年の折り返し地点を前に、エイヤッと更新を再開します。