皮下補液の大量投与について | ママときどき獣医師〜ペットに負担のない治療を目指して〜

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ママ獣医師・鈴木綾香です。東洋医学、整体、理学療法、レメディ等、色々な角度から治療を行う往診専門の動物病院・オムニア自然療法ペットクリニックを福岡で開業しています。2020年4月に,福岡の福間海岸前に『ペットも人も元気になれる施設』P&Hをオープンしました!

こんばんは爆笑


ママ獣医師の鈴木綾香ですパー


今回は年末年始、私が往診に出向いていたとっても小さい800gほどのティーカッププードルちゃんのお話ですえ゛!

このわんちゃん、去年の9月からずっと吐き続けているらしく、病院で内視鏡やCTなどあらゆる検査をしたけど、原因不明とのことでしたガクリ


1日2-30回近く吐くこともあるらしく、首からお腹にかけて毛が抜けてしまっていました…


体重も元気なときの半分にまで減り、原因がわからないことで治療も奏功せず、神頼みまでされたとのことでした泣


でも毎日毎日、皮下補液や注射に通い、それでも改善が見られないと、誰でも不安になりますよねううっ...


そして、大晦日。この写真を見て、いてもたってもいられず、往診してきました。


お伺いしたときは、いつもの病院で150mlの皮下補液をしに行って帰って来たところでした。


「なぜか病院に行ったあと、毎日興奮して鳴いたり咬むんです」


と飼い主さん。


見ると、皮下補液から四時間近く経っていたのに、細い前足は足首くらいまで、胸もだるんだるんに下に垂れるくらいまで点滴の液が溜まっていました。



「ちょっとこの子には、150mlは多いかもしれません。肩や腕が痛かったり、重くて鳴いているかもしれませんよ」



その日は、朝病院で処置をしてもらって、結局夜にやっと液が吸収されたそうです大泣きうさぎ



翌日は、お正月の当番医のところに行かれるということでしたので、そちらでお話しして、皮下補液の量を減らしてもらってくださいとお伝えしました。



そして翌日。点滴を100mlに減らしてもらったそうなのですが…



そのあとは全く鳴くことがなく、落ちついて帰ることができたそうです泣
(100でも多いという獣医さんもいらっしゃると思います)


これは獣医さんにより考え方が違うと思いますので、ここではあくまでも私の意見を述べようと思います。



獣医さんによっては、
「皮下補液は入れれば入れれるだけ入れた方がいい」と考えられてる方も多いようです。


たまに猫ちゃんでも一気に300mlとか入れられる先生もいらっしゃって、患者さんからそれを聞くとぞっとしますえ゛!



でも、難しい原理とかは敢えてここでは書きませんが、皮下補液をしたあと半日も体に吸収されずに残るような量は私は逆に体に負担になると思います。



ご自分の肩に体重の倍近い重りを乗せられたらどうでしょうか?


きっと誰もが悲鳴をあげるのではないでしょうか?



静脈点滴の過剰投与で肺に水が溜まって肺水腫を起こすことはありますが、皮下補液でも同じことが起きる可能性は十分あります。


今回の子のように、「苦しい、きつい」というのが、病院から帰ったあとに「鳴く、咬む」という異常行動となって出ることもあるかもしれません。



でも獣医さんによっては、その行動を「病院が怖いんだね、仕方ないね」で終わるかもしれません。



年末に書いた寝たきりのワンコのところでも書きましたが、動物たちの「声」をちゃんと聞いてあげて汲み取ってやるというのは、とても大事なことだと最近つくづく思います。


結構、ワンコやにゃんこたち、飼い主さんに訴えてる子が多いんです。


でも、飼い主さんも、ましてや獣医さんでもそれを間違って解釈してることも多いです。


皮下補液については、賛否両論あると思いますが、私は2-3時間で吸収できる量を数回に分けて入れるのがベストだと思っています。


飼い主さんが、ご自宅で補液をされている方も多いと思いますが、「脱水してるから入れれば入れるだけいい」という考え方は、危険だと思います。



私が前職で巡回していたペットショップでも、小さな子犬に脱水してるからとかなりの量を補液をされているのを見て、注意したこともあります。



やはり子犬などは、投与しすぎで亡くなる子も多いのです。



そんなに大量を入れないといけないほど脱水してる場合は、私はもう皮下補液ではなく静脈から点滴しないと無理だと思います。


獣医さんではなく、飼い主さんやブリーダーさん、ショップスタッフさんの判断で皮下補液をされることも多いと思いますので、皮下補液にも限界があるということを知ってほしく書かせていただきました。



この子については、まだまだ書くことがありますので、次回はどんな治療をしていってるのか書いていきたいと思いますてへぺろうさぎ