1. 西郷隆盛と大久保利通
    明治維新の立役者は袂を分かつことになる。
    教科書では征韓論に敗れた西郷は下野した、という書き方になっている。
    西郷が不満士族の先頭に立って戦うはめになったのは皮肉なことである。
    地元では西郷は大人気、大久保は不人気ということらしい。
    そう簡単には割り切れないものと思うが、情の西郷、理の大久保と言われている。
    情と理。
    経営者はこの二つを併せ持つことが重要とされる。
    情だけでは経営は成り立たない。
    緻密な計算に基づく理の世界も必要。
    理だけでクールなだけの人でも経営は成り立たない。
    経営は生き物という。
    口で言うはたやすいが実行は難しい。
    どんな時にもへこたれず、明るく前向きに実践する。
    これが肝要かと。

    ところで、稲盛和夫さんはどうだろう。
    情と理を兼ね備えた大人物と言えるだろう。
    まず、技術者として偉大である。
    鹿児島大学を出て、4年か5年かそこらで、
    日本で最初に松下電子に納入する電子部品を開発される。
    まさに、技術者・研究者として並外れた実力を示された。
    これがなければ、退社した稲盛さんを会社設立にまで持ってゆけるだけの
    支援をする人はなかっただろう。
    アメーバー経営は実に緻密である。
    アメーバー間で貸し借りも発生する。
    あたかも、アメーバーが一つのカンパニーであるかのように緻密に計算される。
    ここには、遺憾なく稲盛さんの理の世界が発揮されている。
    ところで、京セラフィロソフィーとなるとどうだろう。
    ここでは、経営哲学が高度なレベルに練り上げられている。
    技術者であり研究者であり数理に明るい経営者であり、
    そしてまた経営哲学を樹立されている。
    人間の本質にさかのぼり、情の世界も十分に論述されている。

    ボランティアで始められた盛和塾が1万数千人まで膨れ上がったのは、
    まさに稲盛さんが情と理を兼ね備えた人物であることの何よりの証でありましょう