ある日、10歳男児が喧嘩で殴られたという主訴で救急搬入されました。
顔面の疼痛を強く訴えています。
現場で嘔吐3回。目を開けるのも苦しいとのことで苦しんでいます。
救急搬入時、著明に発汗しています。
また、心拍が30台の徐脈になっています。血圧は110/60と正常です。
モニターで見ていると、脈の呼吸性変動が目立ちます。
問診すると、目を動かすのも痛いとのこと。
なんだか腹痛もあるとも言っています。
これはっ!!
Oculocardiac Reflex(OCR)だ!!
Oculocardiac reglex (またの名をAschner phenomenon)とは・・・
眼窩の吹き抜け骨折の際に、外眼筋が挟まったことにより迷走神経反射が誘発され、徐脈・嘔吐・めまい・失神・腹痛などを呈する状態。比較的、小児に起きやすい。
下の文献がよくまとまっています。
Oculocardiac reflex induced by an orbital floor fracture: report of a case and review of the literture. Kim BB, et al. J Oral Maxillofac Surg. 2012 Nov;70(11):2614-9.
眼窩底骨折で起きやすいとされていますが、今回は眼窩内側壁骨折で外眼筋が挟まっていますね。
幸い、緊急手術を試行された後は症状は落ち着き、複視の残存はありません。
顔面骨折で緊急手術が必要な疾患の数は減っていますが、OCRは緊急手術を考慮する一つの指標とされています。
・・・というか、こんなに辛そうで徐脈なのを放置しておくのは怖いし、可哀そうです。
救急医が落ち着いて全身管理をするために、徐脈を呈する疾患は覚えておかなくてはいけないですね。
私は初めてこの状態を診たとき、ビビッて何度も心エコーを当ててしまいました。
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