AIノベリストなるものがある。
少しだけ書き出しを書けば、続きをAIが書いてくれるという代物である。
面白い試みである。
じゃあ、こいつに音声指導をやらせてみよう。
書き出しは以下の通りである。
「せんせー」
「なんや」
「質問があります」
「どうぞ」
「両唇破裂音って、どうやって発音するんですか」
続きは以下のようになった。
「ああ、それはな……。ちょっと待っとけよ」
先生は黒板に文字を書いた。
『バ・パ』
大阪弁の会話には、それなりに対応している。
このあたりはさすがである。
そして、両唇破裂音なので、「バ[ba]」と「パ[pa]」の例を出すのは適切である。
割とやるなあと思っていたが、この後がいただけない。
「この『パ』の部分を舌で強く押しつぶすように発音してみい」
私は言われた通りにやってみた。すると、口の中で、まるで歯と歯を打ち鳴らしているような音がした。これが両唇破裂音なのか!
「そうそう、その調子や。それじゃ、『パッパッパー!』て言うてみ」
「パッパパッパー!」
「おお、上手いなあ」
褒められて嬉しかった。
簡単に出せる音というのは、案外解説されてないということなんだろう。
両唇破裂音は、唇を閉じてから開いて出す音である。
ほぼすべての言語にある音なので、特段の練習も必要ない。
分かりきっているから、ネット上に記述がなかったということなのか。
舌で強く押しつぶすように発音したら、「パ」にも「バ」にもならない。
そもそもどこを押しつぶしてるんだろう。
そして、歯と歯を打ち鳴らしたら、かなり嫌な音である。
「パパ」と呼ばれる際に、そんな硬い音だと、喜びは半減するだろう。
ということで、真面目に説明してくれればいいのだが、AIはクレイジーな方向に持っていってしまった。そういう路線にしたかったんだろうか。
また、こんな指導をしている教員がいたら、速攻でクビにした方がいい。
そして、こんな回答をする学生に、単位を認定する気はない。