ビジネスマナーを伝える時、事例は不可欠です。本に書いてあることより、自分自身が体験したことを事例としてお話しする方が説得力があります。ビジネスマナーの大切さを実感してもらう、口は災いの元であることを肝に銘じる事例です。そのひとつをきょうはご紹介します。


2度と行かない飲食店の話です。
それはスポーツつながりのママ友で集まった懇親会の夜のことでした。3時間飲み放題コース、しゃれた洋風居酒屋でのことです。

ひとしきり盛り上がって帰ろうと幹事のママ友が会計を済ませたところで、ふとトイレに行きたくなって私だけ集団の輪の中から抜けて奥のトイレに入りました。少ししてトイレのドアを開けた時には、すでに友人たちはお店の外に出て集まっているのがガラス越しに見えました。

今まさに「きょうは、ありがとうございました。おいしかったです」とお店の方に声をかけようとした瞬間でした。「早よ帰れよ、酔っ払いが!」とスタッフ同士で話しているのが私の耳に入ったのです。舌打ちが先だったか後だったか、そこはよく覚えていませんが、一瞬何が起こったか分かりませんでした。鳥肌が立ちました。いやいや聞き間違いかなと思った矢先、追い討ちをかけるように「うろうろすんな、ボケ」と再び聞こえてきました。

締め切った店内、スタッフ同士の会話。外の友人たちには聞こえるはずもありません。それを承知で、安心し切って悪態をついたことは明らかでした。感じのいい店長さんは友人たちの輪にいて、スタッフの悪態には気付くはずもありません。ただ、たまたま帰りそびれた私がスタッフの本音を聞いてしまったというだけの話。まさに家政婦は見た状態。とても残念な話です。

恰幅の良い、感じのいい店長さんはお客さんからの支持も厚いのですが、若いスタッフ教育まで手が回らないのかもしれません。「早く帰りたい。こんな仕事、なんで俺がやらなくちゃいけないんだよ」とスタッフはうんざりしていて、お金のために嫌々、仕事を続けているのだとしたら悲し過ぎます。でも、仕事は仕事なのです。改めて壁に耳あり障子に目ありだと、気を引き締めて、心からの接客をして欲しいと思いました。


一瞬、ほんの一瞬、「今の言葉、聞きましたよ!」と釘を刺そうか迷いましたが、比較的ご近所でママ友のお気に入りの店ということもあり、そっと気付かれないように店の外に出ました。そして、この件はお店を出た後も友人、知人に伝えることはしませんでした。ただ、ビジネスマナー研修の事例としては大いに活用させていただいています。その意味で感謝している驚いた一件でもありますが、よほどのことがない限り、もうその店に行くことは2度とないと思います。


コスパが良く、料理も美味しいお店だっただけに残念ですが、客の立場になった時、私たちは何を求めているかというと味やコスパだけではなく、お店の雰囲気やスタッフの感じ良さ、おもてなし力でもあります。居心地よく過ごせるか、という点でお店を選ぶので、やはりそこにいる人の影響力は大きいですね。

あの人がいるからまた行きたい、と言われる上質の接客は丁寧さ、対応の臨機応変さ、知性や感性を感じさせる言葉遣い、身のこなしなど多岐にわたります。そんなお店もよく知っています。

次回は、またすぐに何度でも足を運びたくなくお店、についてお話しします。


それでは、最高の11月9日をお過ごしください。
きょうも最後まで読んでいただき、ありがとうございました。