三権分立の意義を忘れた最高裁判決ー臨時国会召集訴訟 | 笑う門には福来るのブログ

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【最高裁が原告議員の上告を棄却】

 2019年英国最高裁は、英国のEC離脱を巡って当時のジョンソン首相が、議会を長期間にわたって閉会したことに対し「違法・無効」と判断した。

 

 一方日本では昨日、安倍政権が98日間憲法上の臨時国会召集請求を放置し、かつやっと召集した臨時国会で審議もせずに衆院解散をした事実に、憲法判断せずに「議員の国賠請求はできない」と上告を棄却した。

 

 最高裁は、憲法の三権分立による司法権による行政権への抑制・チェック機能を全く果たそうとしなかった。英国の長い法制度と日本のたった百数十年の歴史の差を痛感する。

 

【憲法53条後段の違反】

 憲法53条後段には、「いずれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない」とある。

 

 2017年6月22日に野党が臨時国会召集請求をした時は、安倍政権は、憲法53条には、何日以内に、とは書いていないから「相当期間内」であれば問題ない、として、とうとう98日間臨時国会を召集しなかった。

 

 しかも、やっと9月28日に召集したと思ったら、開催と同時に衆議院を解散させてしまった。実質審議が全く行われず、これでは「臨時国会を召集しなかった」と同じことになる。

 

 これに対し、国会議員を原告に、全国の沢山の弁護士・学者が各地で国家賠償訴訟を提起、現在6地裁・高裁で判決が出ていて、あとは最高裁の判決待ちになっていた。

 

 1970年佐藤栄作政権では、召集まで176日も要したこともあった。最高裁は事務上の「合理的な期間」はどれほどなのか、はっきり判断すべきだった。

 

【自民党改憲草案では20日以内】

 自民党が野党時代に作った2012年の改憲草案では、憲法53条に「20日以内」の召集を義務付ける期限規定を盛り込んでいる。しかし今回の対応は言行不一致、言っていることとやっていることが全く違うことになる。

 

 地方自治法101条第4項では「当該普通地方公共団体の長は、請求のあった日から二十日以内に臨時会を招集しなければならない」と規定されている。

 

 臨時国会の召集に応じないのは、都合の悪い審議を行って内閣支持率が下がり続けるよりも、間を開けて国民が次の関心事に移るのをじっと待っているだけに思える。

 

 憲法の条文上、憲法53条による請求があった時には、内閣には国会を召集する憲法上の義務が明らかに存在する。召集するか否かを判断する権限はない。小学生でも分かることだろう。

 

 そうでなければ、少数議員による臨時会招集要求は無意味になり、53条後段は空文に帰し、実質的に削除されたのと同じになり「なし崩し改憲」となってしまう。少数議員によるこの請求権は、最低限の議会による内閣のコントロールを担保する大事な規定である。「憲法の番人」としての最高裁の役割を今回しっかり果たして欲しかったものである。

 

【宇賀裁判官の反対意見】

 そんななか、判決に関わった5人の裁判官のうちの1人行政法学者出身の宇賀裁判官の反対意見は特筆に値する。

 

「内閣は議員の請求から20日以内に召集決定の義務を負う。今回は臨時国会の審議は全く行われなかったので、要求は拒否されたと見ざるをえず、特段の事情がない限り違法と言わざるをえない」として、憲法違反になりうるとした。

 

「臨時国会で審議を妨げられるのは議員の利益の侵害」とし、賠償命令が相当という意見を付した。判決とは180度違う反対意見である。