沖縄のビリーホリデーと呼ばれる与世山澄子の最新アルバム。与世山澄子は1940年生まれで今年で65歳というベテランのジャズシンガー。16歳でデビューし、1972年の沖縄の本土復帰まで米軍基地のクラブでフルオーケストラを率いて活躍していた。その後、本土復帰と同時にサックス奏者であった夫の我那覇文正氏とジャズスポット“インタリュード”をオープン。自ら店内で演奏しながら、本土への公演旅行を行い当時の評論家などから大きな評価を得て、沖縄だけでなく全国でも注目を浴びるようになる。
1983年(デビュー17年目)に初めてのアルバム“Intoroducing”をリリースし、1983年にはビリーホリデーのピアニストであったマル・ウォルドロンとも共演している。
今回のアルバムは1985年以来20年ぶりの4枚目のアルバムにあたる。アルバム名のとおりすべての曲が彼女のお店である“インターリュード”で録音されている。次世代アーティストともいえる、南博(p)、カ川大樹(b)、 菊地成孔(sax)、パードン木村(produce) 、ZAK(engineer) といった旬なアーティストやエンジニアたちが沖縄へ渡り彼女をサポートしながら作られたアルバムである。
収録曲はどれも彼女が長年歌い続けてきたであろうスタンダードが中心で、彼女の深くブルージーな歌唱は晩年のビリーホリデーを思い起こさせる。かつてアメリカであった沖縄で生まれ育ち、米軍基地でアメリカ人を相手に歌を唄ううことからキャリアをスタートさせた彼女の歌には、今の日本人にシンガーには到達することができない深みがある。バックのミュージシャン、エンジニアともに彼女の歌へ敬意を表し、シンプルに温かくサポートしているのも印象深い。
30年以上経営され続けたジャズ喫茶の店内で、1960年代の機材と05年最新機材を駆使し、ワンポイントマイクで録られたモノラル盤なのだが、モノラルとは思えないほど音が良い。店内の空気を録音するために、録音機材の搬入とセッティングだけで7時間を費やしたそうだ。
アルバムのリリースこそ20年ぶりになってしまったが、彼女は現在も沖縄と東京を中心に定期的かつ精力的にライブを行っている。今回のアルバムは復帰作ではなく、あくまで今まで歌ってきた仕事の一部にあたる。
沖縄の本土復帰というまさに激動の時代を生きてきた彼女ではあるが、このアルバムからはどんなに時代が変わろうと、決して変わることがない彼女の歌に対する誠実さがひしひしと伝わってくる。