Campbell Brothersの新譜。あのロバート・ランドルフの出現で脚光を浴びるようになった“セイクリッド・スティール(Sacred Steel=聖なるギター)”というジャンルの本家であり、ランドルフの師匠にあたるバンドである。
セイクリッド・スティールとはスティールギターを用いたゴスペル音楽のことで、本来ハワイアンやカントリーといったあまり黒っぽさを感じさせない音楽で使われるこの楽器をファンキーに主役として使った音楽のことを指している。その起源はかなり古く1930年代にまでさかのぼる。スライド・バーで奏されるスティール・ギターは人の声のように響き、独特の高揚感を作りだすことによって、教会では精霊を讚えて来たという。
このCampbell Brothersも今まであまり知られていなかったグループだが、実は40代を中心としたベテランの兄弟グループ。メンバーである兄弟たちは10代の頃から楽器に親しんでいるが、世俗的なR&Bには関心を示さず、グループとしての発表の場はすべて教会内部に限定。教会の外で演奏するようになったのはなんとつい最近である1998年からとのこと。
メンバーのチャック・キャンベルは足元のペダルで音階をつくるペダルスティールという難しいスライドギターを最も早くセイグリッド・スティールに取り入れた男であり、あのロバート・ランドルフに最初にスティールギターを買い与えたそうだ。
演奏の中でも特に印象的なのがチャック・キャンベルのペダルスティールとダリック・キャンベルのラップスティールという2人の名手によるスティール・ギターで、ゴスペル=ボーカルといった既成概念を払拭した凄まじい演奏と存在感で全体の高揚感を煽っている。
今回のアルバムは彼らの演奏にいち早く注目した“Medeski Martin And Wood ”のジョン・メデスキがプロデュースを担当。自らランドルフらとともにゴスペルのインストグループを結成するほどセイクリッド・スティールに魅せられてしまい、自ら今回のプロデュースを熱望したという。
このアルバムは長年教会で鍛え上げてきた強固なビート、ファンキーなスライドギター、黒人音楽の深いルーツを感じさせるゴスペルというCampbell Brothersの豊かな音楽性とジョン・メデスキが持つ現代的なグルーブ感が見事に融合した傑作となっている。
曲調もゴスペルにブルース、JBばりのファンキーなチューン等黒人音楽のヴァリエーションの集大成ともいえる内容である。
タイトルで“Can you feel it?”とあるが、彼ら音楽の持つ圧倒的なパワーや存在感の凄さは人種や時代を超えてあらゆる人々の全身全霊に響いてくるであろう。