8歳7歳息子との絵本生活

8歳7歳息子との絵本生活

絵本感想が中心です。読み聞かせ講座をきっかけに絵本の世界に魅了され、いまは子供そっちのけ、自分が絵本を楽しんでいます。息子たちは、1年4ヶ月差の歳近めの兄弟です。小3の長男、小1の次男です。気になることは子連れキャンプ、子連れディズニーランド。

「まちんと」

文:松谷みよ子

絵:司修

戦争、広島の原爆投下を題材にした絵本です。

もうすぐ3歳になる女の子が、原爆によって大怪我を負い、トマトを口に入れてやると「まちんと(もうちょっと)」と言い、そして死んでいった。


短いお話なのですが、読んだときの衝撃が強めなので、あまり小さな子にはおすすめしません。私がこの絵本を最初に読んだとき、やり切れなくて涙が出ました。

きっとこの子は、もうちょっと生きたかったことでしょう。まちんと、まちんと。その願いを叶えてあげられなかったことの悔しさ。きっとこの子の親も胸が張り裂けたことでしょう。

このお話が空想の世界の出来事ではなく、80年ほど前に実際に起きた出来事(トマトのくだりはあったか分からないが、このように小さな年齢で亡くなっていった子がたくさんいたんだろう)なのだと思うとやり切れない思いです。


戦争を実際に経験した人が寿命を迎えています。戦争経験者だった私の祖父や祖母も数年前に亡くなりました。戦争の悲惨さを見聞きでは知っていても、知っているということと体験することって違ったりします。戦争を知らない世代が、悲惨な戦争というものに向かってしまわないかという不安。

日本はここ数十年、賃金がほとんど上がらず、これまでにないほどの円安、国としての衰退が進んでいると感じざるを得ません。そんな状況だからこそ、どこかで間違って、民意を先導して、過激な方向に向かってしまわないだろうか。

いまどきの戦争は、機械同士の戦いで、戦場で命を落とすとしても職業軍人だけ。そういった説明も聞いたことがあります。しかし、いま遠くの国で起きている戦争では、昔の戦争と同様に、子供たちまでもが命を落としている様子が報道されています。


子供たちにこの絵本を読んだとき、涙を流したりするような、強い反応はありませんでした。絵本を読んだ翌日、長男は小学校で読むと言って、一日だけこの絵本を小学校へ持っていきました。


絵本の感想は聞けなかったのですが、数日後、長男が

「どっちかできるなら、戦争のない世界がいい?それとも病気のない世界がいい?」

と聞いてきました。ちなみに、長男は病気のない世界だそうです。戦争は自分たちで頑張ればなくすことができるけど、病気はなくすのが難しいからだそうです。


私たちは頑張って戦争のない世界を作っていかねばなりませんね。





「ぼちぼちいこか」

作:マイク•セイラー

絵:ロバート•グロスマン

訳:いまえよしとも

知名度高めの絵本かと思います。この絵本の英語でも読める版を借りました。

カバがいろんな仕事にチャレンジするんだけど、どれもダメみたいなお話。主に、体重やパワーがありすぎることが原因。長男は、カバには穴を掘るみたいな仕事が向いてるんじゃないかと言ってました。


印象的なのは和訳の仕方で、「No!」という言葉がいろんな和訳をされています。和訳だけでもいいですが、英語付きの絵本で比べると子供たちが英語に興味を持ってくれたりするかもです。

ちょっとおとぼけなかんじの関西弁が、絵のキャラクターとあっていて、ほのぼのとさせられます。

この関西弁のかんじ、どこかで聞いたことあるなと思ったら、ミニオンのグルーさんでした。ちょっと顔の雰囲気似てない?


後半に出てくる、少し横になろう、気楽にね、みたいな言葉は癒しを与えてくれます。失敗続きなんだけど、ネガティブな印象のない絵本です。


私もぼちぼちいこかな。





「なきむし」

作:いまむらあしこ

絵:にしざかひろみ

「なきむし」と「きかんぼ」の2つのお話が収録されています。なきむしは、正義感の強い人のために涙を流せる子のお話が、クラスメイトの女の子の視点で描かれます。きかんぼは、異性の幼馴染とのなんともいえない距離感を描き、幼馴染の男の子の視点を通して人の痛みを自分の痛みのように感じられる女の子のエピソードが描かれます。共通して、子供が持つ自身の正義のようなものが主軸になっています。

お話の長さは、それぞれ読み聞かせで30分くらいで読めるくらいのボリュームです。どちらのお話も話題の中心となる子を、他の友達が語るような構成が特徴的です。


うちの子たちは「きかんぼ」はあまりうけませんでした。同じような関係性の女の子がいなくて、主人公の子の気持ちにイマイチぴんとこないのかな。一方、「なきむし」の方は絵本の世界にすごく入り込んでいました。


いじめっ子気質のとおるくんに「ほんとにダメだ!先生に言った方がいい!」と憤慨する長男。いじめられっ子の藤井君に「かわいそう」と同情する次男。2人の反応を通して、いま身近にはこんな子はいないことの確認もできました。


「なきむし」は三部構成となっており、鳥の親子、物損事故、いじめのエピソードと続き、段々と強く感情移入しやすい構成になっているのも良いところです。鳥の親子のエピソードは、ふーんくらいの反応で聞いていた子供たちが、物損事故のエピソードではとおるくん良くないねーとぼやき始め、いじめのエピソードは前述したような強い感情を持ったようでした。


「なきむし」「きかんぼ」に出てくる子供のように、自身の正義を持ち、筋の通った子に育ってほしいという親の思い。一方で、正しいことを主張し続けることは風あたりも強く、本人にとっても負担がかかるもの。自分の子には適度なスルー力も持ってほしいと感じてしまうのは親の勝手な相反する思いです。

長男は言葉にこそ出さないときはあるものの、心はゆうきくんのようなまっすぐな性格であり、道子のようにやさしい心が育っていると感じています。次男は、適度なスルー力、周りの流れに合わせてこうとする力があるかな。


元々、長男はストーリー性のある絵本を聞ける力がありましたが、ここへ来て次男がよく物語を聞けるようになったなと感じます。小学生になったことの影響もあるのかな。