「まちんと」
文:松谷みよ子
絵:司修
戦争、広島の原爆投下を題材にした絵本です。
もうすぐ3歳になる女の子が、原爆によって大怪我を負い、トマトを口に入れてやると「まちんと(もうちょっと)」と言い、そして死んでいった。
短いお話なのですが、読んだときの衝撃が強めなので、あまり小さな子にはおすすめしません。私がこの絵本を最初に読んだとき、やり切れなくて涙が出ました。
きっとこの子は、もうちょっと生きたかったことでしょう。まちんと、まちんと。その願いを叶えてあげられなかったことの悔しさ。きっとこの子の親も胸が張り裂けたことでしょう。
このお話が空想の世界の出来事ではなく、80年ほど前に実際に起きた出来事(トマトのくだりはあったか分からないが、このように小さな年齢で亡くなっていった子がたくさんいたんだろう)なのだと思うとやり切れない思いです。
戦争を実際に経験した人が寿命を迎えています。戦争経験者だった私の祖父や祖母も数年前に亡くなりました。戦争の悲惨さを見聞きでは知っていても、知っているということと体験することって違ったりします。戦争を知らない世代が、悲惨な戦争というものに向かってしまわないかという不安。
日本はここ数十年、賃金がほとんど上がらず、これまでにないほどの円安、国としての衰退が進んでいると感じざるを得ません。そんな状況だからこそ、どこかで間違って、民意を先導して、過激な方向に向かってしまわないだろうか。
いまどきの戦争は、機械同士の戦いで、戦場で命を落とすとしても職業軍人だけ。そういった説明も聞いたことがあります。しかし、いま遠くの国で起きている戦争では、昔の戦争と同様に、子供たちまでもが命を落としている様子が報道されています。
子供たちにこの絵本を読んだとき、涙を流したりするような、強い反応はありませんでした。絵本を読んだ翌日、長男は小学校で読むと言って、一日だけこの絵本を小学校へ持っていきました。
絵本の感想は聞けなかったのですが、数日後、長男が
「どっちかできるなら、戦争のない世界がいい?それとも病気のない世界がいい?」
と聞いてきました。ちなみに、長男は病気のない世界だそうです。戦争は自分たちで頑張ればなくすことができるけど、病気はなくすのが難しいからだそうです。
私たちは頑張って戦争のない世界を作っていかねばなりませんね。