田中忠三郎
『南部つづれ菱刺し模様集』

大変珍しい写真集が手に入りました。






南部菱刺しは青森県に古くから伝承されてきた
刺し子の技法です。麻布に糸を刺してゆきます。
同じ青森県内の「庄内刺し子」「津軽刺しこぎん」 
と合わせて日本三大刺し子と呼ばれています。





一昨年の夏 青森八戸の南部菱刺し作家 
天羽やよいさんの仕事場を訪れました。
天羽さんが衝撃を受け、南部菱刺しの道へと 
導いてくれた書がこの写真集だったのです…









南部菱刺しの蒐集家で研究家でもある
筆者 田中忠三郎の毛筆サイン入りです。





【菱前掛け】

色鮮やかな菱刺しの前掛けは日用品というよりも 
祭礼時の晴れ着として仕様されました。麻布に
当時高級だった羊毛ウールで刺し子されました。





【べこのくら】

昔は牛(べこ)の鞍(くら)に農具を結びつけて田畑
を耕しました。その鞍を元にした図柄模様です。
牛は神様の使いであり縁起佳き紋とされました。  




【きじのあし】

山間部に生息する野鳥 雉子(きじ)の足跡を元に
された刺し子模様。南部では秋振舞(あきぶるま)い 
の祝宴で雉子の出汁蕎麦をふるまったそうです。




【ののつづれ】

麻布と書いて「のの」と読みます。「つづれ」は綴織
ではなくどうも「襤褸(つづれ)」の意味のようです。
麻布つづれは浅葱色に藍染めした麻の布に木綿布 
を裏打ちして更に菱刺しを施した南部の長着です。
新しい間は祭礼の時に纏う晴れ着ですが着古して 
くると普段の作業着に下ろして着ると云われます  





この本の表紙写真に目が惹きつけられました。
本文に解説もないし、いつの年代の写真かも 
わかりません。でも推察するに、洋傘を持った
この若い女性二人が着ているのは間違いなく 
「麻布つづれ」です。祝祭の日に晴れ着として 
纏い、記念撮影をしたのではないでしょうか? 






北日本周辺のみで極少部数だけ
頒布された希少書籍でしょう… 
昭和染織本の熱情に感服します。


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