身に覚えのない料金を請求するメールや、未納の料金を支払わないと訴訟手続きを開始すると脅すハガキが届くなど、架空請求の被害が急増している。2017年に全国の消費生活センターに寄せられた架空請求に関する相談件数は18万3000件で、前年の8万4000件の2倍以上に増えた。実在する大手通販サイトをかたったり、弁護士を名乗ったりする手の込んだ手口が増えているため、国民生活センターは、ハガキやSMS(ショートメール)の実例を公開。18年4月20日には、「絶対に応じないように」と警告を発した。

身に覚えがないのに「今日中に支払わないと法的措置をとる」

国民生活センターによると、最近増えているのが、メールやハガキ、電話などで「本日中に支払い手続きをしないと法的措置をとる」と伝えて、消費者を不安にさせる手口。特に50歳以上の女性の被害が増えている。たとえば、こんなハガキだ

《消費料金に関する訴訟最終告知のお知らせ
この度、貴方の利用されていた契約会社から契約不履行による民事訴訟として、訴状が提出されました事をご通知致します。
管理番号(× ×××) 裁判取り下げ最終期日を経て訴訟を開始させていただきます。
尚、このままご連絡なき場合は、原告側の主張が全面的に受理され、執行官立会いの下、給与差し押さえ及び動産、不動産の差し押さえを強制的に執行させていただきますので、裁判所執行官による執行証書の交付をご承諾いただきます様お願い致します。
裁判取り下げなどのご相談に関しましては、当局にて承っておりますので、お気軽にお問合わせ下さい。
※取り下げ最終期日 平成30年4月××日》

念がいったことに、取り下げ最終期日はハガキが届く当日になっていることが多い。被害者をあわてさせるためだ。そして、以下のようにもっともらしい問い合わせ先が記入されている。
《法務省管轄支局 民間訴訟告知センター

東京都千代田区霞が関2丁目×××
取り下げ等のお問い合わせ窓口 03-××××-××××》
さらにハガキには、《プライバシー保護のため、ご本人様からご連絡いただきます様、お願いします》と書かれ、他の人に相談しないようクギを刺している。問い合わせ窓口に電話すると、支払方法を指定されるが、その方法もクレジットカードや銀行口座への振込ではなく、コンビニエンスストアを利用する手口が増えている。コンビニで高額のプリペイドカードを購入させ、カードに記載されている番号を伝えるよう指示し、カードに入っている電子マネーをだまし取る「プリカ詐欺」や、悪徳業者が「支払番号」を被害者に伝え、コンビニのレジでカネを支払わせるなど、「コンビニ払い」の仕組みを悪用する方法だ。ちなみに「支払番号」詐欺は、実際は悪徳業者が買い物をした代金を被害者に肩代わりさせる手口だ。

コンビニが詐欺に悪用されやすいワケ
国民生活センターでは、次のような事例を紹介している。

【事例1】

「消費料金に関する訴訟最終告知のお知らせ」というハガキが届き、利用したことがある会社から訴状が提出されたと記載されていた。裁判取り下げ期日が当日だったので、あわてて電話すると、取り下げ担当窓口で国選弁護士を名乗る者を紹介された。「弁護士」に連絡すると「取り下げ料金10万円をすぐに支払うように。他人には絶対に言わないように」と言われ、指示どおりにコンビニで「支払番号」で支払った。その後、請求内容を不審に思い、弁護士に電話すると、「会社に電話するように」と言われた。「会社」に電話しても誰も出ず、「弁護士」とも連絡がつかなくなった。

【事例2】
スマホに大手通販業者の名前で料金未払いを連絡するSMSが届いた。以前登録したアプリの利用料金約30万円を請求する内容で、法的手続きをとると記載されていた。電話すると、「いったん支払えば後日清算して返金する」というので、コンビニでプリペイドカードを購入、番号を相手に伝えた。その後、別のインターネット会社を名乗る者から電話があり、「調査の結果、他に3~4社分で総額約90万円の未納があるが、今なら追加で約40万円支払えばすむ」と言われ、同様にプリペイドカード購入で支払った。しかし、いまだに返金が来ない。

このように、いずれもコンビニを支払手段にしているのが特徴。コンビニは店舗数が多くて気軽に行け、営業時間が長いうえ、さまざまな支払いができるため、詐欺に悪用されやすい。しかも、銀行など金融機関の窓口では特殊詐欺に合わないよう、行員教育が徹底して目を光らせているが、コンビニの窓口はアルバイトの場合が多く、無防備に近い。国民生活センターではこうした詐欺に遭わないよう、こう呼びかけている。「未納料金を請求されても、決して相手に連絡してはいけません。相手とのやりとりの中で、自分の情報を相手に知られてしまい、それをもとにさらに多くの金銭を要求されることになります。特に、コンビニで支払うよう要求された場合は、不審な取引ですから絶対に応じてはいけません」そして、不安に思ったり、架空請求かどうか判断がつかなかったりした場合は、すぐに消費生活センターのホットライン(局番なしの188=いやや!)や、警察(相談専用電話:#9110)に電話するようアドバイスしている。


J-CAST会社ウォッチ / 2018年4月30日 17時0分