映画の本棚のはじめに
自分の本棚に気にいった本を並べるように、好きな映画のDVDを本棚に並べる試みを通して、浮かび上がってくるもの、見えてくるものがある。それを自分の時間のおもむくままに書いていきたいと思う。
自分の時間のおもむくまま、そこに自分の本棚の意味があるのでは。自分の都合のいい時、気が向いた時、自分の状態に合う本や映画を選んで、自分の時間のおもむくまま、読んだり見たり、中断したり、また再開したりできるのだから。
昔、中学生の夏休み、自分の本棚に本を並べる、どの本をどの位置に置くか、どの順序にするか、ただそれだけのことに一日の時間をつかった、そんな馬鹿馬鹿しくも透明な時間が楽しかったことを覚えている。
あの頃、映画を、DVDで、自分の本棚に並べられる日が来るなんて思いも及ばなかった……。
もっとも、DVDまでに、ベーターやVHSで収集して苦い思いをしたが、それはまた別の話。このDVDにしてもブルーレイとか次の何かとか、どうなることか、それもさらにまた別の話。
色々な並べ方、順序を試してみたが、(最初にやったことは、自分のベスト・テン評価の順番、それがベスト100、150、200、となって、さらに、300本、400本、それ以上と本数が増加してゆくにつれ、評価の入れ替えなど混乱して収拾がつかなくなった。)
結局、私の場合、大きくは日本映画と外国映画に分けて、映画公開年月日の順番に並べることに落ち着いた。(ただし、細かいことを言えば、映画公開年月日のデータが、調査の裏付けがそんなに正確ではない。未公開の映画で、代わって制作年の方を記したものもある。外国映画の場合は、外国での公開年月日を日本公開年月日より優先した。等々の例外ばかり。)
日本映画のDVDで、私が入手できた、最も古い映画から、始めようか。
1930年代当時もそれ以前も、もっと古い映画がいっぱい上映されたが、DVD化されたのは、さらに私が入手できたのは、今のところ、これだけに限られる。
1932年
6月3日 大人の見る絵本 生まれてはみたけれど
(監督:小津安二郎)
1933年
6月1日 滝の白糸
(監督:溝口健二)
9月7日 出来ごころ
(監督:小津安二郎)
1934年
6月28日 隣の八重ちゃん
(監督:島津保次郎)
1935年
6月15日 丹下左膳餘話 百萬両の壺
(監督:山中貞雄)
1936年
4月30日 河内山宗俊
(監督:山中貞雄)
10月15日 祇園の姉妹
(監督:溝口健二)
1937年
2月4日 新しき土
(監督:伊丹万作、アーノルド・ファンク)
8月25日 人情紙風船
(監督:山中貞雄)
11月11日 風の中の子供
(監督:清水宏)
1939年
10月10日 残菊物語
(監督:溝口健二)
12月14日 鴛鴦歌合戦
(監督:マキノ雅博)
こうして並べてみて、浮かび上がってくるもの。それは、1930年代という時代の姿。当時の人々の暮らす空気のようなものが感じられる
これらの作品はいずれも、第二次世界大戦以前に公開されたものだ。それにしては、私が新聞などで教えられた「戦前の暗い時代」「封建的」というマスコミの常識とは違う。
生まれてはみたけれど、出来ごころ、隣の八重ちゃん、風の中の子供、などは、現代の都会風俗劇だし、時代ものといっても、人情紙風船、などは現代人の心理を描いている。しかも現代の生半可な作品より現代的な深さ。鴛鴦歌合戦は時代もののミュージカルだ。
この時代の姿・空気は、DVD化された映画を、こうして本棚に並べてみて、気づく。見えてくる。
次回以降、個々の作品について、気づいたこと、見えてきたことの幾つかを書こうか。
なお、1930年代に公開された作品で、現在まだ、入手できないのは、
・滝の白糸(溝口健二)
・出来ごころ(小津安二郎)
・伊豆の踊子(五所平之助)
・浮草物語(小津安二郎)
・浪華悲歌(溝口健二)
・一人息子(小津安二郎)
・限りなき前進(内田吐夢)
・路傍の石(田坂具隆)
・五人の斥候兵(田坂具隆)
・綴方教室(山本嘉次郎)
・阿部一族(熊谷久虎)
・愛染かつら(野村浩将)
・暖流(吉村公三郎)
・土(内田吐夢)