(式典:ベルサール汐留)

「浜離宮で何をやるつもりですか?」東京都公園協会の担当者に会った時、きっとこう思ったに違いない。11月7日に開催した「令和の万葉大茶会」は、僕が副会長を務める一般社団法人令和・家持ネットワーク協議会が企画したものです。文化庁から日本博イノベーション型プロジェクトに認定され、東京都環境局から後援を受け、その上で万葉大茶会実行委員会が主催しました。

 

「令和の万葉大茶会」は、新元号「令和」の典拠となった万葉集「梅花の宴」を再現するものです。万葉集の編纂者である大伴家持は、日本の四季折々交えた和歌を詠み後世に伝えてきました。そして「梅花の宴」は、家持の父である大伴旅人が開催したものです。

2020年オリンピックの地である東京からスタートし、「梅花の宴」を通じて、家持が赴任した各都市を四季を感じながら巡るという、家持の選集した万葉和歌の世界観を表現したいと考えたのです。2021年富山県高岡市、2022年鳥取県鳥取市、2023年福岡県太宰府市、2024年宮城県多賀城市、2025年奈良県明日香村、そして大阪万博へとつないでいきます。

 

(中島御茶屋)

東京オリンピックが延期になってしまい、「令和の大茶会」も2021年に延期すべきかどうか、考えた結果、新型コロナで社会が沈んでいるからこそ、「梅花の宴」を再現し、日本を盛り立てていこうと決意したのです。改めて場所はどうすべきか・・・、四季が感じられる庭園は何処にあるのか・・・、思いついたのは浜離宮だったのです。正式には「浜離宮恩賜庭園」と言い、東京都の所有で、東京都公園協会が管理しています。早々に、公園協会に貸してもらえるかどうか、話に行くと「貸すことが出来るかもしれない」と。ただ、僕らのやりたいことが庭園内で出来るかどうかは「検討を要する」と。やりたいこととは、海水を引き入れ池に浮かぶように建つ「中島御茶屋」での水素茶会と水素Violinコンサートです。

 

「御茶屋を貸し切りにするにはどれくらいの費用がかかるのですか?出来れば、中島御茶屋ともう1つ借りたいのですが?」、担当者「御茶屋だけ貸し出すことは出来ません。閉園後、浜離宮全体を借りてもらうことになります」、「え・・・、全部ですか。新型コロナ対策で、人数は極めて少数なので、他の所は使いませんけど・・・、因みに貸し切りの金額は、いくらになりますか?」、担当者「350万円です」。準備から片づけを入れて、17時から23時。全部借りるとなれば、場所が場所だけにこれくらいするのか・・・。日本博イノベーション型プロジェクト「令和の万葉大茶会」のスタート、せせこましくやってもカッコつかないし、浜離宮でやってみよう、となったのです。公園協会の方々も、ほんとなのか・・・、と感じていたと思います。

 

これから5年間続けようとしている「令和の万葉大茶会」は、万葉集の世界観が前提で、その万葉集には日本の四季折々の姿が詠われています。地球温暖化が国際社会の大きな課題となり、パリ協定、2050年脱Co2と温暖化防止に大きく舵をきっています。温暖化によって、日本の四季がなくなってしまえば、100年後の日本の子供達は、万葉集で詠われている世界は、全く理解できないことになります。ダイヤル式の黒電話を今の子供たちが全く理解しないように・・。日本で、万葉集の世界観を理解できない子供たちをつくるわけにはいきません。だからこそ「令和の万葉大茶会」は、テクノロジーと文化が融合し、地球温暖化を防ぐメッセージを伝えていくことが使命だと考えています。具体的には、照明に利用する電気を水素燃料電池でつくる。お茶会のお手前で使うお湯は、水素燃料電池でつくられた電気で沸かす。記念コンサートの音響電源を水素燃料電池から供給する。これらを移動式電源車ともいえる燃料電池自動車(FCV)トヨタMIRAIをつかって実践することにしたのです。使用したのはMIRAI3台、元環境省特別参与の増山壽一、LUNASEAのSUGIZO、そして僕が提供したものです。

 


(夜の中島御茶屋)

浜離宮中島御茶屋の池の水面に突き出たウッドデッキから見る東京のビル群の夜景、そして水面に反射する光、池周辺の植栽の緑、ここで水素燃料電池で生み出された電気を使い、コンサートが出来れば・・・。でも、浜離宮内でコンサートをやれるのかと・・・。「過去にスピーカーで音楽を流した事例もあります」と公園協会の担当者から教えられたのです。この雰囲気に合うとなるとやはり、エレクトリカルなViolinコンサートだな・・・。となると頼めるのは、LUNASEAのSUGIZOしかいない。コロナ禍で極めて少人数で行うイベント、コンサートを想定している中島御茶屋の規模を考えると中に入れるのは15人。さいたまスーパーアリーナを満杯にしてコンサートを行っているアーティストが、15人の為にやってくれるのか・・・。コロナ禍でなければ、池の周りで多くの人に聴いてもらうことも出来るけれど、そうもいかない。先ず、聞くだけ聞いてみよう。さて、どうなるか・・。


「浜離宮で何やるつもりですか?~水素茶会&水素Violin Vol.2」に続く