ご縁があり、香十が主催する銀座での「朝香道」に参加しました。週1回1時間の3回コースで「香道」のいろはを知るというものです。茶道や華道は習っているという人には時々出会うけれど、香道を習っている人以前に、知っている人に出会うこともありませんでした。五感の中でも目に見えない、味わえない、「匂い」という最も抽象的で感性に頼る部分の「道」だ。匂いであるにもかかわらず、この世界では「嗅ぐ」と表ずるのではなく「聞く」と表しています。自然の恵みである香木の香りに問うて、その答えを聞くという姿勢の表れだそうです。

 

6世紀に仏教と共に祈りと浄めの香として伝来、平城京、平安京と続き、平安王朝の時代には貴族の生活必需の香となったそうです。鎌倉時代となり、香文化の主役は公家から武家へと変わるも香木(沈香)文化は進化して、東山文化で香木の分類、聞香、後の「香堂」祖型が出来上がったそうです。そして、江戸時代には「香道」が確立され、「組香」が創作されて現代に至っているそうです。流派としては、公家の御家流と武家の志野流があり、一子相伝の家元制度が存在しています。

 

 

今回の朝香は、香の歴史、聞香、そして組香を短時間で会得するというものであり、家元にとっては不愉快な出来事であったかもしれません。写真を使いSNSで参加体験を記事にしたい、終了後参加者との交流のために朝食をとりながら、話をしたい、今までの香道の常識感からすれば、ずれていると思われるかもしれません。習い事感覚より、日本人として他人に語れるビジネス上の武器という感覚に近いのです。だからこそ、朝7時15分からの1時間、終了後には香が洋服に付着し、1日中、ほのかに香るのです。

 

1日目は聞香を体験し、それぞれの香を自らの言葉に置き換えるという訓練を行いました。あくまで「聞く」ので、人それぞれの受け止めは異なるし、表現する言葉も違うので、正解は無いのです。言葉に置き換える、これは実はとても難しということがわかりました。2日目は、組香という香り当てゲームにチャレンジです。「星合香」という七夕をテーマにした季節感ありのパターン少なめのゲームです。6つの香木の香りを牽牛、織女、仇星に置き換えて表現するものです。3日目の組香は「源氏香」、正に源氏物語をテーマとするもので52パターンの中から香り当てるものです。6つの香りの組み合わせ、同じ香りか、異なる香りか、3番目と同じか、4番目と2番目が同じか、それを当てるのです。香りを聞いた時に言葉に置きかえて置かないと香りだけの記憶では違いが見いだせないのです。5回の香りを聞香し、源氏香之図から回答を探し、図とタイトルを紙に書き出すのです。

 

 

源氏香にチャレンジして、何とか香りを言葉に表現することが出来ました。言葉だけでは違いを理解する事が出来そうにないので、イメージする画像も言葉と共に記憶におきました。結果的にみれば、直観に従えば正解に近づけたにも関わらず、「同じ匂いをここで使うわけないだろう・・・」、「このパターンは通常ありえないはず・・・」と理屈を持ち出したことにより、不正解となってしまったのです。理屈より感覚と表現を大切にすればよかった・・・。人の欲、理屈。でも、それが香道の深さなのかもしれません。全員の解答を書き写した書、つまり通信簿みたいなものは、正解者1人にプレゼントされるのです。僕は、それが欲しくて理屈に走ってしまったのです。

 

 

日本人は、部屋の香り、肌への香水等、生活の香りには敏感のはずなのに「香道」はとても遠いい所にあると思う。僕らが近づくべきなのか、「香堂」を伝える人が近づくべきなのか。僕の答えは両者が共に近づくこと、正にこの「朝香道」は両者が寄り添った新たな形だと思うのです。「香道」さあ、体験してみてはどうですか?

 

【香十】サイト掲載記事

http://koju-incense.tumblr.com/post/174589359694/%E9%8A%80%E5%BA%A7%E3%81%A7%E6%9C%9D%E3%81%AE%E9%A6%99%E9%81%937%E6%9C%888%E6%9C%88