騙したつもりが騙された | 言葉は言霊 ~話す言葉によって未来が変わる~

言葉は言霊 ~話す言葉によって未来が変わる~

人の身体は、食べたもので作られる
人の心は、 聞いた言葉で作られる
人の未来は、話した言葉で作られる

いい言葉を聞いて、心を豊かにし
いい言葉を話して、明るい未来を作りましょう

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主人公はある夫婦

夫は社会派の小説を書く作家

妻は真面目な夫に一切不満はなかった

 

出版社に送られてきた読者からの手紙が良く家に届けられた。

 

そのほとんどは中高年の男性からだった

 

ある日、妻はちょっとした悪戯を思いつく

 

女子大生の振りをして友人の名前と住所を借り、

夫にファンレターを書いたのだ

 

あまり返事を書かない夫から返事が届いた

 

「私の小説の読者は30代以上の男性が多く、

あなたのような若い女性の読者がいたことに感激です」

 

妻は面白くなり、その後も手紙を書くことを続け

いつしか夫とおかしな文通が始まった。

 

何通かのやり取りを交わした数か月後、

妻の悪戯心に火が点いた

 

「相談に乗っていただきたいことがあります。

もしよろしければ〇月〇日のお昼に〇〇駅前の喫茶店でお会いできませんか?」

 

そんな手紙を書いたのだ

 

「真面目な夫はどう断ってくるだろう。

そもそも返事は来ないかもしれない」

妻はそう思っていた。

 

しかし数日後こんな返事が届いた

 

「私でお役に立てれば光栄です」

 

妻は驚き少し腹も立ち、悲しくもなった

 

その日がやってきた。

 

十時ごろ、スーツに着替えた夫は

「出版社の人と会ってくる」と言い残し、家を出ていった

 

妻は少し後悔していた

 

「真面目な夫は本気で読者の女性の相談を聞きにいったのだろう。

誰も来ないことに傷つくだろう。

出版社の人と打ち合わせだと嘘をついたけど、それは許される嘘だ」

 

妻は急に夫に謝りたい気持ちがわいてきた。

 

悶々としている間に時計の針が十二時を指した

 

その時ふいに家の電話が鳴り、

受話器を取るとそれは夫からだった。

 

「まだ家にいたのか。お前から誘ったんだから早く来いよ」

 

 

「明日を元気に」山本孝弘著

 

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先日読んだエッセイに載っていたものですが

ラストの一言に、ほのぼのした気持ちになれます。

 

 

騙したつもりが騙された

 

でも、こういう騙し方、騙され方なら”アリ”ですね。