わが家には部屋が3つあって、ぼくの他にキースとスナイダーが住んでいるんだけど、近頃はさらにスナイダーの彼女のサラも、ほぼスナイダーの部屋に住んでいる。
サラは金髪の白人で身長はぼくと同じくらい。初め22-3才かと思っていたら、今日が誕生日でハタチになったらしい。こっちの人の年齢は、外見からはほんとに分かんない。
スナイダーとぼくと同じ大学へ通っていて、今は夏休み。少しだけ授業はあるんだけど、オンラインでの講義だから学校へ行く必要はなくて、明日から故郷のカリフォルニアに帰るらしい。そして9月にぼくが出て行った後は、うちの部屋に入る予定。
そして、気が早いのか、やむを得ない事情があったのか分かんないんだけど、自分のアパートはもう解約しちゃったらしい。そしてわが家のリビングには彼女の荷物がどっさーり。えええ。
それは有りなのか無しなのか、ぼくにはアメリカ人の感覚はわからないけれど、それを聞いたアメリカ育ちメキシカンのジャッキーは、あんた正気?とぶち切れていたので、きっとおかしな話なんだろう。
ぼく自身は、基本的にみんなと仲良くやっているので、広いリビングに荷物があることくらいは我慢の範疇(というか気にならない)んだけど、サラにはもう1つ問題がある。
彼女は洗い物をしないのだ。
朝、学校へ行くために起きて、キッチンでシリアルを用意するとき、ぼくはいつも食器やフライパンが汚れたままシンクに放置されてるのを発見する。
ちょっとムカっとしながらも、ケンカしても英語では太刀打ちできないし、いろいろ(英語と車移動など)助けてもらったりしてるのも事実だから、関係を悪化させても損だと判断する。ときには、自分の食器のついでに洗ってあげたり、気が乗らないときは放置したりしてるのだけど。
だけど昨日の朝はひどかった。
ドロドロのフライパン、オーブンで使う大きい耐熱皿、あまり数のないグラスが3つ、そして、料理の余り分まで放置されてた。
いくら若干ハタチのお嬢さんでも、これはないだろうと思って、散らかってたそれらを片方のシンクにまとめ、他の部分はしっかりキレイにしてやった。キレイなキッチンに、積み上げられた汚れ物。これを見れば、きっと昼間に洗ってくれるだろうと期待してみた。(イヤミ作戦)
が、ダメ。今朝になって、さらに増えてた。爆笑。
そこで新しい手を打ってみた。
「サラ、これ使った?」とシンクを指差しながらすっとぼけた顔で聞くと、いくつか指差しながら「これと、これは使ったわ。でも、後は知らない」と。
あ、絶対ウソついた、と思いながら、
「そっか、じゃあいいや。いつもここにあるものは洗うんだけどさ、今日あんまり多かったからちょっと・・・。いいや、ぼくが今洗っちゃうわ」と、いい人っぽく言ってやる。(「見えすぎる善意」作戦)
これが当たり。
「Akiはやらなんていいわ。自分の分のついでに、私がやるから」と彼女が言った。
ひょっとしたらアメリカ人って基本的に、常にいい人でいたいのかもしれない。だから都合が悪くなれば、悪い人になるのを避けるためにしらばっくれるし、こっちがケナゲな感じにしてやれば、親切な人になるために優しくしてくれるのかもしれないなぁ、と考えた。
「ふぅ、誰がこんなの使ったのかしら」
そんなことをつぶやきながら、サラは洗い物をしてくれたので、ぼくはウクレレを持ってきて、1箇所か2箇所間違えながら、ハッピーバースデーを歌ってあげた。