バレンタインデイという日があって、ホワイトデイという日もある。僕みたいな腐れおっさんでも会社の関係で数個いただいて、それでこのホワイトデイという日には何が何でもお返しをせんければならん。もし万が一、このお返しを忘れると、あのおっさんは何たら不義理なやつや、こっちはあんな細工の不味い顔面をさらしたくっさい爺に気を使ってチヨコをめぐんでやったのに、それをあのど腐れ外道はお返しを持ってきやがらん。いったいぜんたい何様のつもりじゃ。どんな神経をさらしとるんじゃ、とかなんとか、全面的なそしりを受け、今後会社を退職するその日まで、徹底的な批判を浴び続けるのである。なんと恐ろしいことか。
従って僕は1週間前にはお返しを家内に選定してもらい、それを購入し準備万端整えて、そして月曜日には玄関先に、忘れるべからずと太字で書いた紙を貼りつけた箱にお返しを封印し、そしてめでたく本日、数にして3個、お返しに至ることが、で・き・た。
本当に難易度の高いミッションである。そもそもいただいた品はチヨコなので、苦手とする僕は口に出来ない。だから家内か娘がこれを貪り食らうのや。だから本件は僕には無関係では、なんて思ってしまうのがいけない。会社では僕にくれたのであって、それを食う食わんは関係ないのである。そういう気持ちがどこかにあるから、感謝の気持ちを忘れ、うっかり忘れそうになってひやっとするのである。
だが、だがしかし、それにしても、なんで僕はこんなに神経を減らしているのかしら。禁止にしてくんないかなあ。会社でそういうのはやめにしてくんないかなあ。だからそういう気持ちが感謝の気持ちを鈍らせてしまうのであって、むぎゅう。