十一年も経ったのだなと、記憶を手繰る。
ツバメが賑やかな季節、仙台から北へ車で出掛けた。
一時間ほどかかるだろうか、加美町中新田に着く。
石畳の通りがある。
そこは商店街なので、ゆるゆる歩いた。
ふと、趣ある店の前で立ち止まる。
なんと、可愛らしい寝顔が見えたのだ。
陽だまりに猫。
老舗の菓子種屋「鈴甚商店」であった。
屋根下の文字「越乃雪」とくれば、長岡藩の銘菓。
かつて参勤交代の贈答品で評判となり、広まったという。
原料はもち米粉と和三盆。
菓子種屋は良質な米粉を売る。
銘菓が謳い文句になったろう。
今では、茶や茶菓に茶器も売る鈴甚商店。
当時いた猫は、おそらく存命ではなかろう。
でも、思い出の中では、幸福そうに寛ぐ猫がその店にいる。
撮影日:2009年6月11日