皐月の五日は立夏であった。
季節はもう夏だが、杜の都にはまだ、春の名残の桜の花が見られた。
五日、地下鉄東西線で卸町へ。
卸町駅から北へ真っ直ぐ行くと、卸商の人々が建てた神社がある。
緑に囲まれ、水音のする心地よい場所だった。
若葉の輝きの中に、淡い紅色が混じっている。
ひらりひらりと舞う花びら。
舞い落ちる花びらは、水に浮かぶものも。
カモも寛ぐ庭池に、枝を伸ばす楓が涼しげだ。
楓の葉の間に見える、紅い花と回転羽根のような実を眺めていると、いつの間にか隣に大きな犬がいた。
汗ばむ陽気に、散歩中の犬は庭池で水浴び。
神社の端の方には、梵天房のような八重桜が咲いていた。
そういえば、三日には勾当台公園で、八重咲の桜が満開。
新緑を紅色が飾り、下はツツジ、上は桜と楽しめた。
街路樹のハナミズキは、こぞって苞を開いている。
頬を撫でて通る、初夏の風が温かい。