韓国では、何かを単品でたべるという風習が無い。
たとえば何か肉を焼いて食べるとして、最初は塩だけで食べることはあっても、よほどその肉が高級でもない限り、その肉をずっとそのまま塩だけでは食べない。
ノリで巻いたり、野菜で巻いたり、ゴマ味のする葉で巻いたり、ニンニクといっしょにしたり、焼いたキムチといっしょにしたり、
それは日本と同じで口内調味といってもよいのかもしれんが、韓国の場合は、肉を食べて、そしてコメを食べて、という順番ではなくて、
肉を葉の上に置いて、ニンニクを置いて、キムチを置いて、なんだかよくわからない漬物も入れて、トウガラシの輪切りも入れて、手巻き寿司風の野菜ロールを完成させてから、それを一口でほおばる、というものです。
丼物でもカレーでも同じで、盛り付けた時点では多少の美しさがあるものの、食う段になったら、左手に箸を1本、右手に箸を1本持って、ねりねりと混ぜる。社会的に偉い立場にいる人がカレーをぐりぐり混ぜている図は、日本人には奇異に映ります。
全体が均一な味になってからでないと、韓国人は食べようとしません。とにかく混ぜるのが好きみたいで、昼に食堂でビビンバやカレーが出ようものなら、最初の数分は皿とスプーンがカチカチあたる音が食堂に響き続ける。社員みんなしばらく混ぜまくる。
日本だと子供がやりたがる食べ物の遊びなんだけれども、こちらでは混ぜないほうがおかしいようだ。
さて、味付けを何重にも重ねた「野菜で巻く肉」「混ぜる米」に対して、魚はさすがに魚だけで食うだろうと思っていたが、そうでもなかった。
魚は単に焼くこともあるけれど、韓国人たちは単品で食べるのを必ずしもよしとしない。
横にノリやら赤みそやら、およそ魚と合わないものを合わせ、それを口いっぱいにほおばる。
へえーーー、、、魚もか、一貫してんな、
とある種感心していたら、韓国人スタッフたちは、
「あまり好きではないです」
と。じゃあ無理して魚食うなよ。
日本にもあるか知らんが、韓国にはさんまの干物があります。脂がのっている状態で干物にしてあって、なんとも珍妙な味。魚独特のかなりの生臭さを持っていて、さんまにかなり慣れている日本人でないとたぶん世界でこんなもの好んで食うやついないんじゃないのかと、そう思ったら
「食べられますか?」
と言われ、ええまあ、と答えてあたりを見回したところ、韓国人スタッフたちはほとんど食ってなかった。いよいよみんな嫌いらしい。
このさんまの干物の横にもいろいろサイドメニューや調味料がおいてあって、葉で巻けとか、漬物混ぜろとかアドバイスをいただいた。しかし、魚はあんまり野菜といっしょにしたらいかんのじゃないの。まったく旨くない。
さんまの干物を韓国で見かけたら、強い酒といっしょに流し込むのを勧めます。おそらくそれが唯一のただしい食べ方です