バックハウスのEP盤、モーツァルトのソナタを購入した理由 | 復刻版

復刻版

栄光より挫折、成功より失敗、勝利より敗北…。

ピアニストのポリーニが亡くなった。
82歳だったとのことである。
10数年前は度々来日して、
いつでも聴けると感じていたが、
しばらく来日は途絶えていた…。

近年はベートーヴェン録音が多く、
いまいち精彩を欠いていた。
ショパンの再録を期待したが、
ショパンは厳しかったのか、
叶うことなく逝ってしまった。

追悼の意味を込めてカラヤンとの、
シューマン協奏曲を聴くことにしよう。

この音源は以前にも記したが、
ザルツブルグ音楽祭のライヴで、
歴史的な名演だ…。



全盛期のカラヤンをバックに弾いた、
約50年前のポリーニは、
ダイナミックであり、
颯爽として音楽が躍動している。
一方で近年は衰えが否めなかった…。

さて、バックハウスの話。
ハードオフのジャンクコーナーで、
バックハウスのEP盤を見つけた。
モーツァルトの11番のソナタ。
トルコ行進曲付で有名な曲だ。

EP盤はとても珍しいが、
ジャンクコーナーなので、
売値はたった55円である。
それでも即買は躊躇ったが、
決定的な理由で購入を決めた。
その理由とは…。

まず、ジャケット。
インパクトあるバックハウスの写真が
全面にデザインされていて、
この写真に魅かれてしまう。
小さな7inch盤とはいえ、
CDと比べて印象に残る…。



EP盤独特のペラ紙付仕様でなく、
海外盤と同様の、
全体をコーティングした、
紙を折って作られた体裁だ。

でも、決定的な理由でなかった。
何より決定づけたのは、
内袋である。
Z盤シリーズのオリジナル内袋。
これは非常に珍しいと思う。



破れやすい薄い紙製であり、

 

サービスシールが付いているので、
シールを切り取ったり、
プレゼントに応募したりして、
先ず残っていないし、
完璧な形なのはレアである。

そんな珍しいものが、
たった55円で買えるのだ!!
正に奇跡であり大喜びした。
でも、そんなことで喜ぶ阿呆は、
私くらいであろう…。

さて、肝心な演奏は1955年、
ウィーンでのステレオ最初期録音だ。
英盤のオリジナルLPは非常に高価!
一方で当盤は50年代終り、
日本ではステレオ盤販売前の、
モノ期に発売されたEPである。

でも、モノラル盤とはいえ、
EP盤の音質は極めて良好であり、
"鍵盤の師子王"の見事な演奏に
聴いていて涙してしまった。

ベートーヴェン等に比べれば、
定番のレパートリーではない。
それでもバックハウスの演奏は、
聴かせどころ(ツボ)を捉えている。
内袋ともども良い買物となった…。