ゴルフに行ったら障害者申請をすすめられた

 

リハビリ病院を退院して娑婆に戻った私は、

 

後遺症と心の病を抱え、戦っていた。

 

眼科に心療内科、鍼灸、マッサージ、気功通いに歯医者と悪戦苦闘だ。

 

家では、神棚に向かって「まともに歩けるようになりますように、

 

美味しくものを食べられるようになりますように、

 

眼がちゃんと見えるようになりますように、

 

目覚ましが鳴るまで眠れるようになりますように、

 

ひとりで家にいられるようになりますように、

 

気持ちが楽になりますように、どうかどうか、お願いいたします」

 

と自分の辛いところが全部良くなるように、

 

神様に1日に何度もお願いをしていた。

 

退院して半年くらいたったこの頃は、ほぼ毎日ジム通いをしていた。

 

筋肉がつけば、足の不具合やふらつきも良くなるだろう、と期待した。

 

ちゃんと歩けるようになれば、頭とか眼のグラグラ感は

 

マシになるんじゃないか?と。

 

ジムではストレッチをして、マシーンで筋トレをして、

 

廊下を使って歩く練習をする。

 

ひとりでは不安だから、もともとジム通いが趣味の友人Tにお願いして、

 

同じジムに通ってもらっていた。

 

そんな時に会社のゴルフコンペのお知らせがあった。

 

少し前に友人とゴルフへ行って、迷惑をかけてしまっていた私は、

 

行こうかどうしようか、迷った。

 

足がふらついて、モタモタとしか歩けないし、

 

うまくスイングもできない。まだ、ゴルフ復帰は時期尚早なのか?

 

でも行きたいし…。

 

会社のコンペだけは、キャディさんが付くことになっているから、

 

私みたいに不自由なところがあっても、なんとかなるかも、

 

と甘い判断で 行く、と決めた。

 

当日は、比較的同じ方角に住んでいる同僚が車で迎えに来てくれる。

 

いったい、どんなゴルフになるのか?行くと決めてから、

 

嬉しいよりも心配の方が大きくて、精神的にまいってしまった程だ。

 

それは、わかってたことだけど、ひどいゴルフだった。

 

このゴルフコースは前に回った時、スコアは84だったな、と思いながら、

 

スタートしたけど、そんなスコアを絶対に誰も信じないほど、

 

病気前とは別人のゴルフだ。

 

ボールがクラブに当たらない、バンカーでは転ぶ、坂道でも転ぶ、

 

眼も良く見えないからボールが何処に飛んだかさっぱりわからない、

 

キャディさんは私につきっきりだ。

 

お昼には、病気前は最大の楽しみだった昼ビールも飲まない。

 

飲んだら、ふらついて歩けなくなるからだ。

 

後半は歩くのもきつくなって、一緒に回ったメンバーが支えてくれた。

 

結局130回以上も叩いてやっとのことでホールアウトした。

 

私が心身共に回復したい、と願う一番の理由は、以前のように

 

ゴルフをやりたい、からだ。

 

でもこんなにコースを回るのが辛くて、周りにも迷惑をかけっぱなしで、

 

ゴルフをやる意味も資格はないかも知れないと、悲しくなった。

 

そんな私に一緒に回った総務部長が提案してきた。

 

「歩けないみたいだから、障害者手帳申請したらどお?

 

会社も障害者雇用は助かるし。」

 

倒れてからも 人並に生活ができるくらい回復すると信じていたから

 

障害者手帳なんてそれまで、考えてもみなかった。

 

でも、このまま中途半端な立ち位置では、周りにもに迷惑をかけるし、

 

いっそ障害者 という括りに入って、自分自身も身体の不具合を

 

しっかり認めれば少しは楽になるかも、と思った。

 

自分が身障者だと認めれば、ゴルフがうまくいかなくても仕方ないと

 

思えるし・・・。

 

そんなこんなで、2014年の秋、脳幹出血発症から1年、

 

私は身体障害者申請をして、無事 2種5級の障害者手帳が交付された。

 

これは、残念なことなのか、めでたいことなのか、わからん。

   

                           to be continued.

 

 

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