ゴルフしてみます?

 

毎日3時間のリハビリは、多岐に富んでいる。特にOT(作業療法士)の松井先生

 

のリハビリは実際の生活に戻れるように、という基軸で考えてくれるので、

 

洗濯物が干せるか?料理ができるか?趣味を再開できるか?といった生活に

 

密着した課題でリハビリが行われる。

 

私は一応、立つことはできて、手が使える状態だったので、洗濯、料理は

 

なんとかなるだろう、と免除になった。体幹失調のため、座っていても

 

身体がグラつく私はWii の一番簡単なゲーム、テーブルに空いた穴に

 

テーブルの上のボールを入れる という普通の人ならば、なんていうことのない

 

ゲームをリハビリとしてやることになった。

 

これが、出来ない。一定の時間内にクリアして進んでいくのだけれども、

 

体幹失調で平衡感覚がマヒしている私はバランスが取れない、

 

すぐにタイムオーバーになってしまう。何度やってもモタモタしてボールが

 

穴に入らない。なんなら、Wiiの台の上に乗っていることすらグラついて辛い。

 

こりゃあダメだわ、と自分でダメ出しをする。

 

こんなゲームできなくたって別にいいじゃん、とグレ気味だった。

 

そんな私に松井先生は、「公園に行ってゴルフクラブを振りましょう」と

 

提案してきた、以前入院していた人が持ち込んで置いていった

 

古いクラブが一本あるのだそうだ。

 

松井先生はゴルフのことは全然わからないらしい、でも私の趣味がゴルフで

 

またゴルフができるようになりたい、と訴えていたので 考えてくれたのだ。

 

ゴルフを知らない松井先生と二人では不安だったので、

 

ゴルフ仲間でもある友人Yにも付いてきてもらい、近くの公園に行った。

 

クラブは年代物のパーシモンだ。恐る恐る軽ーく振ってみた。

 

視界がグルグルと回る。クラブの重さに足が体幹が耐えられない、クラブと

 

一緒に身体も回る。ふらふらと転びそうになりながらもしばらく繰り返して

 

なんとか折り合いをつけたけど、

 

これでは、コースになんて出られるわけもない。なんなら打ちっぱなしも無理だ。

 

2階席だったらまちがいなく落下する。

 

道のりは遠い。私はもう、ふつうの人とは全然違ってしまったんだ、

 

と痛感した日、夢なら覚めてくれ。

 

to be continued.