以前にもお伝えしていると思いますが、私のボサノバとの出会いは古く、小学生の時。家のピアノの上に乗っていた色褪せた楽譜の中にあった「イパネマの娘」になります。それまでにどこかで耳には入っていて、「イパネマの娘」という言葉自体も認識はしていました。「これがあの曲の楽譜か」と、頭の中にあるメロディーを参考にしながら鍵盤を押さえた時の感動。なんてオシャレな響き。クラシックにはないハーモニーとリズム。表現するならこのような気持ちだったでしょう。行ったことのないイパネマ海岸の波の音が聞こえてくるようでした。その後「WORLD MUSIC」にも関心を持ちましたが、やはり心惹かれたのは南米、ブラジルの音楽。中でも、清涼感あるボサノバに魅了され、大学の時に入った「ラテン・アメリカ研究会」の仲間とボサノバ・ユニットを組んだほど。一言ネタのピアニカはその時購入したものです。また、ブラジリアン・ジャズにも踏み込んだことが、「小心者克服講座」の曲に繋がっていきます。

 

 いまだにブラジルこそ訪れていませんが、いつか行ってみたい場所の一つ。ジョアン・ジルベルトのライブや映画にも足を運びました。潮の香りがするボサノバの調べは、私の日常、いや人生に欠かせないもの。だから、銀座のデパート屋上や九品仏のカフェでボサノバをひたすらかけている時間は至福の時でした。

 

 同じボサノバでも、私の場合は夏用と冬用があり、プレイリストも分けています。朝の目覚めにかける音楽は時期によって変わり、ある意味季節がDJをするのですが、夏になると必ず流れる曲があります。Duke Pearson の「Sandalia Dela」。この曲が「冷やし中華始めました」のように、夏を実感させてくれるのです。夏になったらというより、この曲が聴きたくなったら「夏の始まり」。今年は、梅雨が明ける前から流れ始めました。夏が恋しくなったのかもしれません。

 

 この曲はブルー・ノートの良質なラテン・ジャスを集めたコンピレーションに入っていたもので、とにかく聴きまくりました。もう25年以上。だから、音の中にたくさんの「夏」がミルフィーユのように重なっています。イントロのピアノのアルペジオ。この曲を聴かなくなる日までが、私にとっての夏。そんなボサノバな日常と、あの曲が重なりました。

 

「どうにかなりそう-beachside mix-」

 

 またまた仲間が増えました。「どうにかなりそう」のボサノバ・バージョン。ヴォーカルとして歌ってくれたのは、結成20周年、ジャズ、AORと、とにかく上質なサウンドを生み続けているバンド、「パリスマッチ」のミズノマリさん。これまで「恋がはじまる」「summer samba」「I’ll remember」、そしてフェスにも参加してくれました。今回4作目になるわけですが、ミズノさんの唯一無二の声色は本当に貴重で、クールでアンニュイで、透明感があって切なくて、とにかく大好きな音。ミズノマリさんの歌う「どうにかなりそう-beachside mix-」は、ハンモックに揺られ、潮風を浴びながら。今年の夏は、この曲で心地よい風と波の音を感じてください。海に行けなくても。

 

PS:「どうにかなりそうfeat.ミズノマリ-beachside mix-」の配信は8月26日(水)。また、次回の週刊ふかわは8月23日(日)の配信となります。