「条件つきのフライトとなります」

 

 この時期は珍しくないそうですが、あまり耳慣れないので不安を抱いてしまいました。到着地は雪。氷点下4度。着陸できない場合は羽田に戻る場合もあるという飛行機は、東北の連山を覆う真っ白な雪の上を飛んでいました。

 

「どうか着陸できますように…」

 

 ゆっくりと高度を下げる機体が地面に接近していきます。

 

「よかった…」

 

 なんとか着陸。安堵の一行をJAあきた北の方と、大きななまはげが出迎える大館空港。空港こそ違いますが、もう毎月のように秋田を訪れています。

 

「ちょっと降りすぎましたね」

 

 この時期にしては地元の方でも驚くくらいの積雪だそうで、おそらくこれが根雪となって春まで残るだろうとのこと。それでも、東京から来た者にとってタクシーの車窓を流れる銀世界は美しく、雪化粧した木々や田畑に、いつまでもレンズを向けてしまいます。

 

「あそこがとんぶり工場です」

 

 とんぶりを加工する工場の前を通ります。いくつか工場はあるそうで、中には中国産のものを加工して販売する商品もあるそうですが、もちろん「応援」しているのは大館で栽培された、正真正銘、国内産のとんぶりです。

 

「じゃぁ、きりたんぽいっちゃおうかな」

 

 以前、旅の拠点となった道の駅で腹ごしらえ。そういえば朝早かったのでまだ何も食べていません。きりたんぽ鍋の周りを、比内地鶏のたたきや焼き鳥が囲み、もはや日本酒が恋しくなっています。

 

「ソフトクリームありますか?」 

 

 すっかり身体も温まったので、日本酒の代わりに、隣の施設にある地鶏の卵をたっぷり使用したソフトクリームにしました。氷点下の中、片手に持った黄色のソフトクリームに白いスノウフレークがトッピングされていきます。

 

「じゃぁ、そろそろ移動しましょうか」

 

 しばらく休憩して、雪が反射する日差しと眠気が襲い始めた頃、タクシーのお迎えが到着しました。ここから東館小学校に向かいます。

 

「ぜひ、僕たちのとんぶり料理を食べに来てください」

 

 そんなお手紙をいただいたのは今年の5月頃。応援大使に任命されてからのこと。お手紙をくれた全員にとんぶりのCDを送り、10月にはきりたんぽ祭りで4年生と一緒に踊ることもできましたが、小学校を訪れることはありませんでした。そうしてこの度、念願叶って学校の調理実習「T-1グランプリ」に参加することになったのです。「T」はもちろん、とんぶりの「T」。生徒たちが考案したとんぶり料理をいただくことが、応援大使の役割です。

 

「じゃぁ、ここで大丈夫です」

 

 タクシーを降りて、真っ白な道を歩いていると、やわらかな雪がひらひらと落ちてきます。東館小学校の校門が見えてきました。門を通過し、校舎が目の前に現れると、信じられない光景が待っていました。