意外に思われるかもしれませんが、僕が初めて買った車は4WDタイプでした。国産の都市型RVが流行っていたのもありますが、わりと遠出することが多く、山野を駆け回りたいと思っていたからです。目線も高くて乗り心地も快適。特に不満はなかったのですが、ある日、他の車に目を奪われます。

 

「なにこれちょーかわいい!!」

 

 近所の駐車場に停められていた、ニュー・ビートル。それまであまり関心もなく、オリジナルのビートルを見てもそこまで惹かれませんでしたが、その丸みを帯びた独特なフォルムに一目惚れ。近くを通るたびに指をくわえて眺めていました。

 

 それから一年経ったでしょうか。黄色のニュー・ビートルがやってきました。初めての左ハンドル。まだ20代の頃です。黄色が似合う車ってあまりありませんが、ビートルのフォルムにピッタリ。また、マッシュルーム・ヘアーとの親和性も高く、当時はとにかく「似合う似合う!」と絶賛されました。もはやトレード・マークとなり、テレビに登場する機会も増え、角が生えたこともありました。いろいろな場所へ連れて行ってくれました。いつしか走行距離は10万キロを超えていました。

 

「きっとどこかで走っているだろう」

 

 手放さなくてはならない状況になった時は、なかなか辛いものがありました。

今もどこかで走っている、そう信じて次の車を購入しました。新たにやってきたのは、なんと同じニュー・ビートル。色は、ベージュ。ただ今回は、カブリオレ、いわゆるオープンカーになりました。

 

 黄色のニュー・ビートルに乗っている時に気になっていたわけでもありません。自分でもオープンカーを乗る日が訪れるとは思っていませんでした。しかし、試しに乗ってみるとびっくりしたのです。この開放感。もっと早く乗っていればよかった。同じ道を走っていても、まるで景色が違います。高速道路なんか、空を飛んでいるかのよう。黄色のビートルでは行けなかったところにまで連れて行ってくれました。たくさんの素敵な景色を見せてくれました。気がつけば、20年ほどビートルに乗っていることになります。

 

 そしてこの度、ビートルの生産が終了との報せがありました。1938年に生産が開始され、1979年にオリジナルのタイプは終了。時を経て1997年に「ニュー・ビートル」として復活。さらに2011年には「ザ・ビートル」にモデルチェンジ。そして最後の「ビートル」は工場を出て、今後博物館に展示されるのだそう。かつて復活したからといって、同じことが繰り返されるとは限りませんが、20年後、新しいビートルが街を彩っていると僕は信じています。それまでどうにかビートル歴を途絶えさせないようにできればいいのですが。