あらかじめお伝えしておきますが、アイスランドには行きません。みなさん気を遣って「今年は行くのですか?」なんてよく訊ねてくれるのですが、もうかれこれ3、4年行っていないと思います。ある意味、羊たちと戯れるための夏休みと言っても過言ではなかった私が、あんなに毎年訪れていた私が、ここ数年めっきり北緯66度の島を訪れなくなったのは、気持ちが離れてしまったからではありません。

 

いくつか理由はあるのですが、その一つは、「みんなが行くようになったから」です。

 

 読者の中には、私に影響されて訪れるようになった方もいるでしょう。安心してください。あなたを責めているのではありません。世間のアイスランドに対する関心が非常に高くなってしまったところにあるのです。

 

 私が初めて訪れた頃は、それこそ地球の歩き方なども存在せず、ほとんど情報がありませんでした。大使館に電話することもしばしば。それが今では、あるわあるわ。ガイドブックや関連書、おしゃれ雑誌では特集が組まれ、旅行会社ではツアーが組まれ、テレビでも目にする機会が増えました。自ずと周囲のリアクションも変わります。かつてはまるで南極大陸にでも行くかのようなリアクションをされましたが、今では旅人の聖地と化し、それこそインスタ映えするスポットも多く、憧れる者が増えました。

 

 私自身、書籍、番組など、そう言った現象に少なからず加担しているわけで、本来は喜ぶべきことなのかもしれませんが、そこは乙女心ならぬおじさん心。ここまでブームになってしまうのは全く望んでいないのです。秘密基地にたくさんの人が押し寄せてしまうような寂しさ。追っかけをしてきたバンドのメジャー・デビューを祝福すべきなのに、どうしても寂しさが拭えない。みんなのものにならないで。

 

 フィンランドの時もそう。サービスエリアもDJもそう。いつも後から時代が追いかけてくる。大衆のものになって欲しくない、みんなのものになって欲しくない、もう「僕は嫌だ!」なのです。

 

 もちろん、私よりもずっと前から訪れている方もいるでしょうし、それでも好きなら行けばいいのです。しかし、私の島ではなくなってしまった現実を目の当たりにしたくない。この複雑な気持ちは、決してご理解いただけないものではないと思います。今は、行かないでおこう。もう少し経ってから、存分に堪能しよう。それが、「アイスランドに行かない理由」のひとつ。

 

 ということで、お休みはのんびり、ゆっくりと流れる時間をどこかで満喫したいと思います。皆さんも、いつもと違う景色をお楽しみください。