「こんばんは、こどくらりょうです」

 

 きらクラ!の放送内でのことでした。たしかエリック・サティの「ジムノペディー」が流れて、その雰囲気に思わず乗っかってしまったのですが、その時抽出されたのがこの「こどくら」という人物。深夜何気なくラジオをつけたら妙な番組に遭遇、なんてことはしばしばあると思いますが、まさしくそのイメージ。いつからやっていたのか、誰が聞いているのか、ラジオから語りかけてくる、決して明るくはないトーン。孤独を愛しているのか恐れているのか、どこか寂しげな声色。もはや、夢なのか現実なのかさえわからないまま眠ってしまい、朝起きてから少しだけ残っている記憶。そんな番組が、「こんばんは、こどくらりょうです」からイメージされました。

 

「こんど、特番をやることになりました」

 

 耳を疑いました。「こどくら」はその後も放送内で何度か登場する機会はありましたが、まさか番組になるなんて。そのイメージはしぼむことなく、知らないところで膨らんでいたのです。あの漠然としたイメージが、ある種の悪ふざけが、しっかりとした企画書になり、あらゆる部署を通過し、なんと日曜日の夜の3時間という素晴らしい時間をいただけました。一緒に面白がってくれる人は少なくなかったのです。

 

 きらクラ!のスピンオフといえば簡単ですが、なかなかできるものではありません。そもそも、「こどくらって誰だよ」で終了するのが普通。実体の掴めないキャスティングで、よく実現に至ったと思います。今回、私のパートナーを務める、菅原敏さんとの出会いも大きいでしょう。きらクラ!のBGM選手権があったからこそ出会えたわけですが、詩人が加わることによって、「こどクラ」という面が安定してきます。

 

 先日、「こどクラ」は無事に収録を終えました。とても絶妙なバランスの3時間になったと思います。「きらクラ!」と「こどクラ」と、奇しくも放送は同じ20日の日曜日。きっと、スタッフからのプレゼントなのでしょう。

 

 あらためて、生まれた家にピアノがあったこと、ピアノの音色とともに日常を送れたことに感謝しています。このピアノからどれだけ大きな影響を受けたことでしょう。もしも家にピアノがなかったら、全く別の人格になり、今とは異なる人生を歩んでいたのだと思います。油がついて薄汚れた楽譜たち。決してプロのようには弾けないけれど、ピアノのある家に生まれ、音楽を、クラシックを好きな大人になれてよかったと実感するバースデー。あの一台のピアノこそ、人生において最高のプレゼントだったと思います。

 

 

 

⭐︎本日放送⭐︎

NHK-FM きらクラ! 14:00〜15:50

NHK-FM こどクラ   22:00〜25:00