今回のアルバムが、とてもカラフルになったのは、たくさんの絵の具を借りているから。絵の具が先か、描きたいものが先か。いずれにしても、白と黒しか持っていない僕のところに、いろんな色が集まって、色彩豊かな世界ができました。

 まず、今回初めてお借りした「MICO」さんという絵の具。これ自体、とても特徴的で、非常に存在感がある、いわば、赤のような色。「chocolate bossa」「愛はしんどい」「君とSUNDAY」、俗にいう情緒不安定3部作は、同じ絵の具でも、使う量や薄め方はそれぞれ異なります。歌っている人物こそ同ものの、人格が違うのは、ひとりの人間でもいろんな側面があるからでしょう。

 続いて、トミタ栞さん。こちらの絵の具もはじめてお借りしました。トレーナーの色にあるような、明るく前向きな印象を与える新緑の色。若草色。漠然と、明るい曲や違うテンポの曲を作りたいと思い、作曲していたところ、次第に女性の声が聞こえてきて、近寄ってみると、彼女の姿が現れました。もともと、同じレコーディングスタジオを使用していることや、テレビ神奈川の番組を拝見していたことで、僕の頭のなかにはいっていたのでしょう。実際、はじめてお会いする日がレコーディングだったのですが、別の世界に誘われながらもしっかり自己表現しようとする姿勢に、イメージ以上のものを感じました。彼女の色のおかげで、「BEST DAYS OF MY LIFE」は、とても明るく前向きな曲になりました。

 続いて、ミズノマリさん。もう、何度もお借りしているこの絵の具は、色に例えると、みずいろのような印象。水のように掴めそうで掴めない。トラックを製作していて、ひとたびミズノさんの声が聞こえてしまうと、もう離れられません。彼女の涼しげな色を使って描いた「SUMMER SAMBA」からは、夏の香りがしてくると思います。

 そして、ザ・おかわりシスターズ。こちらの絵の具は、薄紫というか、橙色というか、どこか哀愁が漂う色。Satokoの卒業とともに、涙の解散となりましたが、とてもいい思い出ができたと思っています。今回は、iTunesでダンスチャート1位に輝いた「期待感ゼロ」が配信のみだったので、アルバムに収録しました。

 そして、ひときわ目立つこの色は、ショッキング・ピンクといったところでしょうか。平野ノラ扮するバブリー美奈子が唄う「OK!バブリー!!」。実を言うと、もともとは、「ARE YOU READY?」という曲としてトラックを製作していました。それがあるとき、「OK!バブリー!!」という言葉が聞こえてきてしまい。なので、最初は「ARE YOU READY?」の別バージョン的な感じで彼女に声をかけようかと思ったのですが、いつのまにか、「OK!バブリー!!」が「ARE YOU READY?」を越えてしまいました。平野ノラという芸人さんと出会っていなかったら、こんなことにはなりませんでしたが、バブルという強烈な印象がなかったらCDを作りたいとも思わなかったでしょう。

 そして、こちらもおなじみのガウちゃん。彼女はやはりゴールドでしょうか。今回はカーペンターズの「CLOSE TO YOU」を歌ってもらいましたが、英語の曲がはさまると、アルバム全体に奥行きがでて華やかになります。また、初のオリジナル楽曲、「Beyond the light」はガウちゃんの声量だからこそ描けた曲であることはいうまでもありません。今回インストで収録してある「over the rainbow」も、いつかガウちゃんに歌ってもらいたいものです。

 このように、「I’M MUSIC」の世界は、たくさんの絵の具をお借りして描くことができました。自分ひとりでは描けません。本当、みなさんに感謝です。さて、次は、モノクロの世界を描いてみようかな。