最近は、あまり見かけなくなりましたが、アドバルーンを掲げているようでした。大々的にではなく、お店のある街の人だけに伝わるくらい。その情報が、街の人々にどれほどの価値をもたらしたのかわかりませんが、いざ掲げてみれば、「20周年」という幕を垂らした大きな風船は、僕に、たくさんの力を与えてくれました。

 特に、4月に行われた下北沢での舞台。はじめての舞台。初主演。作品との出会いもさることながら、前向きに決断できたのはまさに、このアドバルーンのおかげ。あまりに調子に乗りすぎて、喉を痛めてしまいましたが、それもひとつの勲章です。 
 
 夏にはアルバム・リリースのタイミングで久しぶりのサイン会も行いました。うだるような暑さの中、来てくれた一人一人と言葉を交わし、握手できたこと。そして、サマーフェスでの熱い一日。これまででもっともオープンカーが気持ちのいい夜でした。

 ロケットマンショー終了の報せを受け、2時間の収録になっても「継続」を選択できたこと。材料がほとんどなくなっても店を続けようと思えたのも、きっと、あの風船のおかげ。

 11月には、中村紘子さんとのコンサートもありました。あんなにピアノに向き合った日々は、ほかにあっただろうかというくらい、無心になって格闘していました。これも、あの風船のおかげ。

 大きな決断に限らず、無意識にしている小さな決断も、あの風船が、僕の背中を押してくれていました。風に煽られながらも、ずっと空に浮かんでいたあの大きな風船。あの風船を、そろそろ取り込まなければなりません。

 門を叩いた20歳の夏。辛かったことは山ほどありますが、それらすべてがスパイスとなって、いま、とてもおいしいスープができあがったような感覚です。20年かけて辿り着いた場所。ここからの眺めを僕は忘れないでしょう。今年一年、本当にありがとうございました。来年も、どうぞよろしくお願いします。
                                

                                    ふかわりょう