被せ物をする時のお話です。

被せ物(以下クラウン)をする時には、全周クラウンがその歯をしっかり掴んでいないといけません。

虫歯が深かったり、深いところまで歯が折れていたりするような歯に、そのまま型を採って技工士さん任せでテキトーに技工依頼をしてはいけません。

技工士さんは型を取れば何でも作ってくれます。でもそれがちゃんとしたものかどうかはまた別の話です。というかちゃんとした物を作ってもらえるかどうかは歯科医院の仕事ですよね。。

しかし、保険診療においてはそこまで言及されていないので、このようにちゃんとマネジメントされていない状態でテキトーな型取りがなされテキトーなクラウンが入っているケースjは実はよく遭遇します。

 

 

 

今回は前歯のクラウンがグラグラするというケースです。

右上1のクラウンに動揺がありましたが、実際は唇側歯質が歯肉縁下まで破折していました。

 

これではフェルールを獲得できないばかりか、生物学的幅径を侵襲しているため、きれいな補綴は不可能であるばかりか、仮に入ったとしても炎症が起こったままになるでしょう。

 

そこで、一旦この歯を抜歯して、歯根面への歯根破折が無いことを直視において確認した上で、前後180度向きを変えて、抜歯稼に戻しました。

これを外科的挺出と言います。

 

治癒機序は自家歯牙移植と一緒なので、再植後は一定期間静観し、生着したと判断した頃から歯内治療等を進めていきました。

 

ちゃんと健全歯質が全周歯肉縁上にあるので、辺縁歯肉の炎症はありません。

あとは補綴操作ですが、僅かに両中切歯には歯肉ラインの高低差があったため、歯肉縁下のサブジンジバルカントゥアの調整を行って、歯肉ラインを整えました。

このような補綴の前に行う操作を補綴前処置と言いいますが、このようなケースでは矯正的挺出や臨床的歯冠長延長術などの手段もありますが、いずれにせよ、生物学的幅径が侵襲されている場合は、まずそれを再構築した上で補綴操作に移行しないと、その後の歯肉の違和感や、脱離・死肉の出血等々予期せぬ事が起こりえます。

 

削って被せる、削って被せるの繰り返しは、有限なので、そんな事を繰り返ししていたらどんどん歯の寿命が短くなりますよ・・・